第11話 上がらないレベルとスキル血肉晩餐。
青天のもと、思いっきり草原を駆けた。
体は軽い。…これならいける。
ボングに接近してすれ違い様に首を斬ると鮮血は舞った。
「これで4体目か。」
人型の魔物の弱点(急所)は人間と大差ないと聞いた。
魔物によっては心臓が二つついていたりもするが狙うなら心臓か首の頚動脈だ。
「やっぱり僕にはこの方が合ってるな。」
今は伊吹ちゃんに借りたナイフで戦っている。
……よく考えればわかることだった。
僕は非力だ。剣や盾をもって戦うと、どうしても動きが鈍るのだ。
「二人には悪いかなと思ったけど………。
ステータスがあがるまではナイフスタイルでいくしかない。」
僕はナイフについた血をティッシュで拭って、ステータスウィンドウを開いた。
―――――――――――――――――――――――――――――
【鈴木明】
種族:人間 Lⅴ:0
信仰:なし
経験値:1/5
魔力:1/1
攻撃力:5
防御力:4
速度:6
感性:7
知力:5
魔法:無属性魔法
スキル:血肉晩餐
称号:邪神の加護
装備品:ナイフ
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「とはいっても、レベルがあがらない!」
どうやら、邪神爺の話していたデメリット効果は機能してるようだ。
…でも、ずっとレベル1とか酷すぎる。
………。
「こうなった以上『
…んー、晩餐は夕食のことだよね。
血のしたたる肉を夕食に食べろとか?
「ウチは貧乏だし、ステーキなんて買えないな。でも、ボングの肉なら………。」
魔物の肉はスーパーでも売られているし、毒をもった個体以外なら、問題なく食べられる。
また、魔物の肉を使った飲食店も多い。僕たち高校生の間ではモンスターバーガーが大人気だ。
「よし、今日の夕食はボング肉にしよう!そうと決まればさっそく剥ぎ取りだ。」
僕はボングの死体に近づいていった。
「魔石は確か心臓付近にあるという話だけどこの辺か。」
初めての解体作業だ。…緊張するな。
僕はボングの心臓にグサッとナイフを突き立てた。
「うっ 物凄いグロテスクだ。血塗れだし……。」
仄かな青白い光を放つ、小指大の魔石がでてきた。
「ついでに肉も切り取っておかないと……。」
剥ぎ取りを終えた僕は手を洗うため、水場を求めて移動した。
周囲を警戒しつつ、しばらく歩いていると小川が見えてきた。
だが、川の手前にボングが二体ほどいる。…水でも飲みに来たのか?
まだ、此方の存在には気付いていない。
…二体を相手にするのは初めてだけど、いけるよね?
僕はボングの背後にゆっくりと近づいて一気に襲いかかった。
「フゴ!?」
ボングはパワーはあるが、速度は僕より遅い。
……それは今までの戦いで理解した。
鈍足なボングはやはり反応に遅れた。
「テイヤ!」
その隙に僕は両手でもったナイフを
血しぶきと共に一体目のボングは事切れた。
二体目のボングは僕の存在に気付き、雄叫びを上げた。
そして、勢いよく襲いかかって来る。
「フゴォォォオオ!!(訳:ヨクモ...ワガト...モヲ...)」
もう不意打ちにはならない、僕はナイフを胸の位置に構えて迎え撃つ。
ボングは右の大振りだ。それに対して僕は逆に懐へと飛び込んだ。
ボングの右ストレートは僕の顔のすぐ左を通過する。
その隙に僕のナイフはボングの左脇腹を深く斬りつけることに成功した。
ボングはブシューと派手に血をぶちまけて倒れた。
…よっしゃ、二体相手でも勝てたぞ!
僕は魔石を回収した後、小川へ向かって手を洗った。
「やっと一息つけるな。」
手を洗いタオルで拭いていると川辺に植物が生えているのが目に留まった。
ダンジョン内には『ダンジョン植物』が生えている。
代表的なのは薬草と魔力草だ。
成分を抽出して『ポーション』『マナポーション』を作り出す技術が
開発されたのでギルドへ持っていけば、買い取ってもらえるのだ。
「よし、採取しよう。」
僕はすぐに行動を開始した。植物を抜いてリュックへ突っ込むを繰り返す、僕の好きな単純作業だ。…………10分ほどで、リュックがパンパンになっていた。
「よっと、こんなものかな。」
「何をしてるのですか?」
声がしたので振り向くと―――そこには黒鉄の盾(バックラー、小型で直径30㌢程)を持ち、腕を組んで立っている伊吹ちゃんの姿があった。
「ありがとう。盾を見つけてくれたんだね。」
「それで何をしてるのですか、明君?」
「これはダンジョン植物が生えていたから、少しだけ採取をね。」
「へ~植物採取ですか。それはずいぶん楽しそうですね!?」
…あれれ、笑顔だけど目は笑っていないような…。
「私が盾を探して必死に駆けずり回ってる時にずいぶん楽しんでおられたようで。」
…気のせいか、髪の生え際付近に血管が浮き出ているような…。
「あの、伊吹ちゃん……?」
「今日は何の為にここに来たんでしたっけ?」
「その、盾を取り戻すためです。」
「正座なさい!」
「はい!」
僕はビシッと正座して再び伊吹ちゃんの気が済むまで説教を受けるのであった。
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