第24話 白夜の夢の目的
「目的?」
「まず……
「まぁ、大体の推測はできている。
この場にいる4人に代表して浩志が答える。
もちろんこの場にいる他の3人もそのような事は推測していた。
「ええ。なら、こういう考えを思いつく人もいるのではないですか?………寓話獣や宵が人為的に創れるのではないかと」
「っ!!まさか!!」
奏恵が勢いよく立ち上がる。
その衝撃で椅子が倒れてしまうが誰も気にしない。
それほどまでに4人の顔は驚きに満ちていた。
奏恵たちも多少考えた事はある。
寓話獣を創ることはできないのか。
そうすれば寓話獣や宵のこともある程度分かり、自分たちの危険を減らせるのではないかと。
だが、すぐに無理だという結論に至った。
やろうとしても
加えて新宿の外界では以前、
だからこそ、出来ないと考えていた。
だが、もしそのようなことが可能なのだだとしたら。
「最強の
「……そんなことできるの?」
奏恵はそう尋ねた。
寓話獣を創る、そんなことを考えているのならできるという確信がないとそんなことを目的にしないと考えたからだ。
「そこまで簡単な話ではありません。奴らもそのために数年もの時間を掛けているのですから。ですが、ある一定の条件さえ揃えば、おそらく可能です」
「一定の条件っていうのは?」
「…全ては分かっていませんが、私たちが把握している条件は一つ……寓話獣を創る為の器、生贄が必要なことです。誰でもいいというわけではないようですが、生贄となる人の目星はつけているようです。正直、もう時間がありません」
「……生贄…だと?」
浩志には『生贄』という単語が途轍もなく聞き覚えがあったのだ。
正確には少し前に烈火が連れてきた狐月凛が贄と呼ばれていたことを浩志は知っていた。
今回の話と凛が結びついたのは至極当然であろう。
「おや、何か知っているのですか?」
浩志の反応に何か知っているのではないかと考えた『
「この前
「本当ですか!!彼女は無事ですか!?」
「…知っているのか」
浩志は
「…ええ、知っていますよ」
「ならなんで保護なり一緒に行動なりしない。その方が安全だろ」
知っているのならそのように思うのは当然だろう。
彼女は
「いやー。
「なんでだ?」
「……申し訳ありませんがノーコメントとさせて頂きます」
「……そうか」
浩志も踏み入ってほしくない話なのだと理解し、そこで話を切る。
「横から悪いけど、その子って強いの?」
さっきまで黙っていた奏恵がその―
「かなり強いですよ。何年も
「なら問題ないんじゃないの。彼女の方が強いんでしょう?そのうち諦めるんじゃない?」
もし
むしろ、何年間も捕まらないのなら
「
「ちょっと待ちなさいな、海を渡ってきたってことは……」
「それにリーダー、副リーダーって」
「ええ。
その事実が4人にとって大きな衝撃だった。
新宿の外から来たというのは分かっていた。
しかし、日本の他の都市から来たのだと思っていた。
普通に考えてそうとしか思えないのだ。
空想侵略により都市間での移動などほとんど不可能となった今、
そんな中、海外―島国の日本に来たという事は海を渡ってきたということになる。
もちろん海にも寓話獣はいる。
そのため碌に動くこともできない船に乗りながら寓話獣を退けないといけないのだ。
誰が予想できようか。
だが、改めて
「…それは聞き捨てならない」
「俺たちはこれでもこの都市でトップクラスに強いんだがな」
純は両手足を獣に一瞬で変形させて近づき、
浩志は床や机から剣山を生み出し
確かに驚いた。
あり得ないと思った。
それよりも、自分たちが負ける、つまり弱いと言われたことは我慢ならなかった。
新宿最強と言われていた伊神新内程ではないが、ここにいる4人は新宿の外界でもトップクラスの強者である。
自分たちは強いという自負がある。
もちろん全員
特に純と浩志の二人は強さに対する想いから
だからこそ、自分たちの
「ほう、すごく存在力が高いですね。それに安定している」
だが、
むしろ彼らの
二人の
「ですが」
「っ!!下!」
「樹木の根か!いつの間に」
それでも
床を突き破るようにして数本の木の根が現れた。
その一本一本の根の太さは人一人が両腕で囲めないほど大きなものであった。
純は奏恵を守るために一旦引いて爪で引き裂こうとし、浩志は刀を生成して木の根を切ろうとする。
だが
「かっったい!」
「切れないだと?」
表面を傷つけるだけで全く切れる気配がなかった。
普通爪や刀で木を傷つけることすらできない。
それができるのは二人の存在力が現実の物質よりも高いからだ。
そして二人の
それなのに切れないのだ。
「足りないのですよ。奴らの
彼らは理解していた。
まだ
訓練をした、色々と試行錯誤をした、だが届かなかった。
その先に
その事を先ほどの攻防で彼らは思い知った。
「ねぇ、海外にはあなたたちと同じくらいの実力の
さっきまでの攻防を眺めていた奏恵は一つ疑問に思ったことがあった。
それは
「いえ、大体あなたたちと同じくらいの実力者が多いですね。
「……なんですって?」
「……なに?」
「ああ、自分たちも実践しようなんて思わない方がいいですよ。高確率で精神を壊しますし、命を削りますから」
「……それにしても、こんな環境でよくここまで
「どういうこと?」
「この都市は特殊過ぎます。内界でしたっけ。まさか超能力すらまともに扱えないなんて…よく今まで生きていられましたね。ここまで戦力の差があるなんて滅多にないですよ。…それに
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