第23話 落日の夜空
「…まて、待て待て待て待て!!えっ?どう言うことだ!?戦いにしか興味がなかった橘さんがなぜ!?」
突然の宣言に烈火はかなり慌てた。
内容もそうなのだが、それよりも戦いにした興味がないと思っていた雷華がそんなことを言ったのが烈火にとっては驚きだったのだ。
だが、烈火のその言いように雷華は青筋を浮かべる。
「おいこらまて、俺が戦いにしか興味ないだって?」
「え?違うのか?」
ブンッ!!
「危な!おいちょっと待て。〈
「……ちっ」
雷華の文句に烈火が即答すると、雷華はバチバチと雷を纏った腕で烈火をぶん殴ろうとするが烈火が慌てて避けて不発に終わり、舌打ちをする。
「で、なんで急にヒカリを弟子にするなんて言ったんだよ」
「こいつ、…ヒカリだったか。先の戦いで
「なに!そうか、もう
一旦落ち着いて訳を聞いてみると、ヒカリが
「烈火さん、
そう言ったのは巧だ。
さっきから烈火と雷華の会話に出てくる
巧だけではない刻も紡志も気になっていた。
凛だけは我関せずといった感じで刻の膝を枕にして寝ている。
「ああ、すまないがヒカリと秀が起きてる時に改めて説明するよ」
「……分かりました」
どうやら今は教えてくれないらしい。
後で改めて説明してくれるということなので3人はそれで納得した。
「ヒカリは俺たち夢幻の杜の仲間だ。ヒカリの意思もあるが、俺としては
「……んーー。まあ、…それでいいぞ、。最近外界がゴタゴタしてて面倒だからな。息抜きがてら手伝ってやろう」
「そうか、ありがとう」
ダメ元で提案してみたがまさかの了承を貰えて驚いたが、それならそれでありがたいと思い雷華に礼を言う烈火。
雷華も初めは断ろうと思っていたが今の外界はイデアの隣人が
「俺はちょっと用事があるから出て行くよ…その前に刻、巧、紡志、凛…は寝ているのか」
「うみゅ」
「お疲れ様。よくやってくれた。ヒカリにも後で伝えておくよ」
雷華との話が一区切りついた後4人に声をかけた(一人は寝ているが)烈火は基地を守り戦ってくれたことに対して褒め、そのまま部屋を出ていった。
「じゃあ俺も出ていくよ。またなガキンチョども」
ついでに雷華も部屋を出ていった。
褒められた四人(一人寝ている)は烈火に褒められて少し嬉しくなっていた。
凛を3人は超能力者になっても成果が振るわない時期を過ごしてきたため、初めて他の人に役に立つことができたという実感が持つことができていた。
その後起きていた3人も緊張がきれ、戦いが終わってすぐということもあってか各々すぐに眠ってしまった。
〜〜〜〜〜
寓話〈ビルダーベア〉討伐から数日後
烏の饗祭のリーダー剣崎浩志と副リーダー藤堂硯は外界東部にいた。
ここら一帯は外界をまとめる三大グループの一つ『招き猫』のテリトリーである。
なぜこのような場に二人がいるのかというと、一週間近く前、
それも出来れば同時に会いたいと
ということで距離的にも真ん中にある招き猫で会うことになったのだ。
「
「さあな。会ってみないと分からん」
そう言いながら二人はある建物へと入っていく。
この建物は招き猫のアジトではなく、今回の会合のために急遽用意した場所である。
流石に何も知らない
中にいた招き猫の案内人に案内されて入るとそこには二人の女性がいた。
一人は三つある椅子のうち一つに座っており、腰まで伸びた艶やかな飴色の髪、万人を虜にしそうなとても色気のある顔立ちや体つき、そしてとてもゆったりとしているが、背中からお尻にかけて大きく開いた服装をしている。
もう一人は椅子に座っている一人のそばに立っており、ショートボブの黒髪に子供と見間違うほど背が低く、可愛らしい顔立ち。
ローブを着ているがその中は布面積の少なくお腹や太ももが露出しているとてもピッタリとした服を着ている。
浩志と硯が部屋に入ってくるのを見て椅子に座っている女性が二人に声をかける。
「久しぶりですね。烏の浩志と硯」
「そっちもな、奏恵、純」
椅子に座っている方がここら一帯を縄張りとしているグループ『招き猫』のリーダーである
そして、奏恵のそばで立っている人が招き猫の戦闘員である
「さっさと座れ」
純が冷たい視線で二人を見るが、二人とも気にした様子もなく浩志は椅子に座り、そのそばに硯が立つ。
「あの暴走娘はどうなんだ」
「なんか弟子をとったから知り合いのところに少しの間いるらしい」
「…あの戦うために生まれてきたと言っても過言ではないあいつが弟子を取った?それはその弟子の子が可哀想だ」
「そんなことない。雷華は優しい、ただちょっと興味が戦いに向いているだけ」
「…ちょっとどころの話じゃないんだけどな」
純の返事に浩志は少し苦笑いする。
雷華は外界ではまあまあ有名な内界民である。
内界民なのに普通に外界に来ては、絡んできた人をボコボコにするだけでなく、強そうな人に積極的に戦いを挑んでは倒していき、寓話獣が出たと知れば乱入してきて全滅させて帰っていくなどやりたい放題しており、たびたび浩志の頭を悩ませていた。
今は招き猫に籍を置いており純とも仲がいいと聞いている。
「それよりも今回についての話をしましょう」
奏恵の言葉に二人は意識を切り替える。
「…
「奏恵、
「ほとんど何も。最近新宿に来たであろう
「…そうか…お前たちもか」
浩志たちも
確認できた数少ない情報として、
浩志は他の情報があまりにも手に入らないことからこれらの情報も向こうがわざと知らせたのではないかと考えていた。
奏恵たち招き猫はどうなのかと尋ねてみると自分たちと同じ様子だったため、よりこの情報はわざと知らされたのだと確信する。
「おや、私が最後でしたか。これはお待たせしましたね」
「「「「っ!!!」」」」
唐突に知らない声に、その場にいた4人は即座にその声の主がいる方に顔を向ける。
そこにいたのは一人の青年だった。
翡翠色の髪を後ろに撫で付けオールバックにしており、鼻が高くとても整った明らかに日本人ではない顔立ちをしている。
そして動きに支障がないようにところどころに装甲の張り付いた服装をしており、背中には一本のロングソードを背負っていた。
「どこから来たのかしら、この建物は内部とその周辺に
「ああ、申し訳ありません。できるだけ人目を避けたいものですから、バレないように来させていただきました」
「探知に長けた人も配置してたはずなんだけどね」
「それは失敬。どうも初めまして。私の名前は……そうですね…『
この建物の周辺には厳戒態勢が引かれており、招き猫の構成員が常に見張っており、奏恵たちがいるこの部屋も外部からの妨害を考慮して窓のない部屋を選んでいる。
奏恵だけではなく浩志、そして新宿の外界最強と言われていた伊神新内でさえバレずに侵入するなんて不可能だと自負していた。
なのに…
「あの程度の包囲網、
この男は事もなげにやってのけた。
この場にいる4人はその事実だけで警戒度をマックスまで引き上げる。
「『I』?明らかに偽名じゃねぇか」
「申し訳ない。いかんせん私どもにも事情がありまして…」
「はぁ、まあいい。…それでこんな手紙で呼び出して、私たちに何のよう?」
「俺たちの方もだ。突然目の前に現れたものだから驚いたぞ」
そう言いながら奏恵と浩志は一つの手紙を取り出した。
そこにはこう書かれている
『突然申し訳ありません。私は『
「ああ、それはうちの『テレポート』の
「にしても、まさか本当に来るなんてね。一週間も前よ、これが来たの。場所も言ってなかったのに」
奏恵は落日の夜空の情報収集能力に危機感を抱くと共に、恐らく無駄だろうと一種の諦めが入っていた。
「恐縮です。では早速本題に入らせていただきます。改めまして私―
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