第11話

◯ 7月22日火曜日 21:05

某地下駐車場


神太郎

「ちきしょう⁉︎」

「離れろ⁉︎」

「くそ‼︎」


エドワード

「おいおい」

「そう焦るなよ」

「俺たちまだ付き合ったばっかだろ?」

「もう少し仲良くなろうぜぇええ」


神太郎

「誰が⁉︎」

「くっ⁉︎」


風切音


神太郎

「はっ⁉︎」


打撃音


神太郎

「がっ⁉︎」

「何⁉︎」


月夜

「拳法⁉︎」


孝一

「しかも」

「めちゃくちゃ速いぞ⁉︎」

「なんだあれは……」

「蹴り…」

「なのか?」


月夜

「早過ぎて…」

「見えなかった……」


ケイコ

「……」


打撃音

打撃音

打撃音


神太郎

「くっ⁉︎」


ケイコ

「へぇ」

「強いね」

「あんた」

「私の『蹴り』を受けて立っていられるなんて」

「なかなか見所あるじゃん」


神太郎

「……ざけんな」

「ご丁寧に急所ばかり狙いやがって…」


ケイコ

「あんたも『拳法』をかじってるなら」

「攻めてきな」

「受けてばかりじゃ」

「私は倒せないわよ」


神太郎

「うるせぇ⁉︎」

「なめんなク……が⁉︎」


エドワード

「口が悪いなぁ坊主」

「吾輩の宿主に対してもう少し敬意を持てよ」

「いや待てよ」

「『元』か」

「元宿主か」

「今はお前が吾輩の宿主か」

「くくくく」


神太郎

(力が抜ける……)

(血が抜けるとかそんなんじゃねぇ)

(全身の骨が抜かれるみたいな)

(体から芯が抜けるような感覚だ……)


ケイコ

「……あらら」

「もう少し頑張れると思ったけど」

「所詮こんなもんか」


神太郎

「⁉︎」


ケイコ

「人間は五感のうち『視力』に頼って生きている」

「目玉を潰せば」

「とりあえず殺すのに時間はそうかからないわ」


風切音


月夜

「神太郎くん⁉︎」


肉が軋む音


ケイコ

「な⁉︎」


神太郎

「ぜぇぜぇぜぇ」


エドワード

「ケイコの目突きを止めた……?」


神太郎

「……そんなに俺の脳汁が欲しいなら」

「くれてやる……」

「ぬぅううううううう」


エドワード

「何⁉︎」

「何だこれは⁉︎」

「脳汁の分泌量が増えただと⁉︎」


神太郎

「おおおあおおおお⁉︎」


孝一

「立った⁉︎」

「神太郎が立った⁉︎」


タイラ

「……甘いな」


打撃音

打撃音

打撃音

打撃音


神太郎

「がはっ⁉︎」


エドワード

「なんちゃって」

「だな」

「いちいちそんことでビビるかよ」


ケイコ

「力任せに脳汁を分泌したところで」

「何も解決してないわよ」

「エドワードに全部吸い取られるだけ」


神太郎

「……なら」

「これならどうだ⁉︎」


発光音


ケイコ

「うっ⁉︎」


エドワード

「ぎゃ!」

「眩しい⁉︎」


孝一

「経文心体術⁉︎」

「オラショを発動したか⁉︎」


月夜

「そうか⁉︎」

「あの『刺青』は」

「悪霊を倒す力があるんだよね⁉︎」


エドワード

「くくく」

「効かねぇな」


神太郎

「何⁉︎」


エドワード

「本当マヌケだな」

「お前は」

「たしかに」

「『オラショ』の力は悪魔に効力を発することは認める」

「チャーリーもトーマスも」

「お前のなんとか術とかで」

「やられたもんなぁ」

「けど忘れてないか?」

「全身刺青っていうのは」

「施すには『難易度の高い部位』があることを」


神太郎

「はっ⁉︎」


ケイコ

「──そう」

「『頭皮』よ」

「スキンヘッドじゃないあんたの頭に」

「『刺青』は施されてない」

「つまり」


エドワード

「テメェの頭は吾輩にとって」

「『台風の目』ってことだ」

「どんなに法力を放出しても」

「吾輩には届かない」


ケイコ

「──そして」

「私は悪魔じゃなくて『人間』よ」

「この戦いにおいて」

「あんたの能力は役に立たない」


鼻骨が折れる音


神太郎

「がっ⁉︎」


倒れる音


タイラ

「……もう見てられないな」


トーマス

「そうね」

「彼の負けは確定したね」


孝一

「う」

「うるさい⁉︎」

「神太郎が負けるわけねぇだろ⁉︎」

「あんなのイカサマじゃねぇか⁉︎」


ユナ

「ちょっとー」

「聞こえてるよ?」

「ケイコちゃんはイカサマなんかしてないよ?」

「正々堂々の勝負だよー?」


孝一

「何が正々堂々だ⁉︎」

「帽子の能力を使ってないじゃないか⁉︎」


ユナ

「別にそんなルール」

「決めてないじゃん」

「勝手に神太郎くんが帽子かぶって」

「自滅してるだけだよ?」

「それの何が悪いの?」


孝一

「う……」


月夜

「神太郎くん‼︎」

「負けを認めてよ‼︎」

「負けてもタイラ先輩を返すだけだよ⁉︎」

「それでいいじゃない⁉︎」


神太郎

「テメェは黙ってろ⁉︎」

「口出しするんじゃねぇ⁉︎」


月夜

「⁉︎」


ケイコ

「……あーあ」

「随分な口の聞き方ね」

「あんた」


神太郎

「調子に乗るのもいい加減にしろ」

「別に頭皮にオラショが施されてなくとも」

「『拳』で直接‼︎」

「ぶちのめすことはできる‼︎」


風切音


エドワード

「おっと」

「そいつは遠慮してもらおうか」


関節音


神太郎

「がっ⁉︎」

「腕が⁉︎」


エドワード

「脳みそに直接吾輩の『触手』が刺さっているんだぞ?」

「お前の体をコントロールするのは」

「お前じゃない」

「吾輩だ」


神太郎

「なんだと⁉︎」


ケイコ

「エドワードがあなたの頭に被った時点で」

「『勝負』はついていたってことよ」


骨折音


神太郎

「あがっ⁉︎」


ケイコ

「念仏を唱えな」

「カクレキリシタン」


風切音


月夜

「神太郎くんっ⁉︎」


To be continued…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る