第4話 田中 吉乃


「タロ散歩に行くよ」


 タロは、散歩と聞くとすぐにテンションが上がる。嬉しそうだ。いつもの散歩コースを行くと、途中からコースを外れた。グイグイ引っ張る。


「どうしたのタロ、どこへ行くの」


 プラタナスの木々を通り抜け、メタセコイヤの木々を通り、ツツジの方へどんどん引っ張って行く。その先のアジサイの根方に赤い物が見えた。イヤな予感がした。果たして、それは例のパンティだ。半分、木の葉に埋もれている。隠し方が雑だ。タロは木の葉からはみ出したパンティをくわえると、ウロウロし始めた。バカ犬が・・。


「タロおおぉぉぉ~。バカ犬があぁぁー」


 大声にタロはポトリとパンティを落とした。伏せをし、ごろりと転がって、へつらって腹を見せた。


「ほら、行くよ」


私が歩き出すと「あの~」と呼び止められた。どこからわき出したのか、老人が居てパンティを持っている。


「これは、お嬢さんのかな」


「ふざけんじゃねえー。そんなの知らねえー」


大声に、老人は驚いたようで固まってしまった。


「ほほほほ・・・・・わたくし、そんな物知りませんことよ」


老人は目をぱちくりさせると「これは・・・・・」と言った。


「よろしかったら、差し上げますわ。おほほほほ・・・・・」


 私は、さっさとその場を後にしたのだ。


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