インディーマイさん


「うーちのマイさん泣かしたのはどこのどいつじゃゴルア!!!」

「イツカうるさい。花粉症だよ」

「なんだ。早く言ってくださいよ」


 聞けば目にくるタイプのアレルギー持ちらしい。うるんだ目が痛々しいが毎年のことだと言って本人はあまり気にしている様子がない。


「だからアイメイク薄いんですか? 雰囲気違うなって思ったんですよ」

「目薬で化粧くずれしちゃうからさ。水に強いマスカラとか色々試したけど、時間が経つと粗が目立つっていうか。そのかわり、これ見て」


 そう言って巻き下ろした髪を耳にかけた。

 光と共に現れた秘宝に目を奪われる。大小さまざまな宝石がぎっしりと身を寄せ、お互いの輝きを反射し合っている。とても大きなピアスだ。


「やばいですよそれ。ティファニーの地下倉庫から出てくるやつじゃないですか」

「今夜の主役はこの子だから」


 夜の店にしては少々味気なかった顔がパッと華やかになった。むしろフルメイクでは主張し合い魅力を消し合ってしまうだろう。


「強盗でもしたんですか?」

「そんなわけないでしょ。これはね、アマゾンの古代都市の神殿で手に入れたの。永遠の美を約束するかわりに呪われるっていう曰く付きだよ。フッフッフ……」

「呪われてもいいから美しくありたいっていう執念の方が怖いです」



 宝石は不思議だ。そして少し不気味だ。人を狂わせる何かがあると思うから。誘惑、魔が差す、心の隙。見た目はこんなにも綺麗なのに裏があると勘繰らずにはいられない。


 なんだか秘境に呼ばれてる気がしてきた。その最奥には幻のクリスタルシャンパンが眠っているはずだ。それを手に入れればキャバクラ界の女王になれる。うん、行こう。今すぐ杉のないジャングルに……ハ、ハクシュン! ……あれ? 私なに考えてたっけ?


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