3日後に幸せになるクリスマス
キッチンに星が飛んだ。
「おはざっすー!」
「ライムさんおはよう。可愛いピアスだね」
「こんなにデカい星のピアス見た事あります?あたし以外誰が買うんだよってレベルっすよね」
流れ星かと思ったよ、そう伝えるとライムさんは笑ってこう言った。
「願い事していいっすよ。こちとら消えない星なんで、ごゆっくりどうぞ」
「まじで! ありがとう!」
片膝付き、指を交互に組んで目を閉じた。
――カレンさんがエルを辞めませんように。カレンさんの昼職が長続きしますように。カレンさんが戻って来てくれますように。カレンさんが新しい職場で優しくされますように。カレンさんが……カレンさんが……カレンさんが……。
「長くね? 起きてます?」
「ごめんごめん、完了した。後は任せた」
「随分真剣に祈ってたっすね。なんかあったんすか?」
「うん、ちょっとね」
「なんかこのニセモノの星には荷が重そうな感じっすね。あっイツカさん、エルの都市伝説知ってます? クリスマス限定のやつ」
「聞いた事ない」
「毎年、二五日だけ店の入口にクリスマスツリーが出るじゃないすか。てっぺんの星に祈ると願い事が叶うらしいっす。条件は、誰より先に願う事。つまり最初の一人限定って事っす」
「それ本当?」
「都市伝説っす」
そう言っていたずらっぽく笑った。
指名客が来たとフロアに出ていったライムさんと入れ替わりで黒服の山下さんが入ってきた。
「山下さんお疲れ様です。今年もクリスマスツリー出すんですか?」
「恒例だからね。あれ組み立てるの結構大変なんだよ。ビル都合でたった一晩しか出せないのにさ。毎年黒服が文句言いながらやってるよ」
大人の男ばかりでツリーの飾り付け。想像するとシュールで面白い。
「そういえばツリーなんて普段どこにしまってるんですか?」
「ビルの屋上に繋がる階段の踊り場。あそこはテナントの物置になってる。暗いし物が多いから入っちゃ駄目だよ」
山下さんは新しい灰皿を重ねて持つとフロアに出ていった。
思わず天井を見上げる。奇跡のトップオブスターは意外とすぐそばにあった。
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