キャバ嬢には向かない職業


「イツカ、子供の頃の夢ってなんだった?」

「宝石屋さんです」


 マイさんは女子だねぇと言って笑った。聞けばこの話題で客と盛り上がったらしい。なんとも平和な卓だ。


「もうちょい成長するとCAさんです。ちなみに今はシンデレラです」

「なんで精神年齢下がってんのよ」


 心なしかキッチンがいつもより明るい。マイさんにジャスミンハイを手渡す。私は紅茶ハイにしようかな。ほっこりするトピックスには甘い酒が似合う。


「ちびマイちゃんの夢は?」

「魔法使い」

「かわいいっ!」


 悶絶だ。ちっちゃいマイさんが呪文かけるの。公園で木の棒を振り回す少女を想像した。


「この話題面白いですね」

「結構盛り上がるよ。この前の客は仮面ライダーって言ってた。大人になってからも好きで大型の免許取ったんだって。本人はこじらせたって言って笑ってたけど、すごいと思わない? 夢叶えたんだよ」

「カッコいい!」


 なにより夢中になれる事が財産だ。私も諦めずに王子様を待とう。マイさんだっていつか魔法が使えるようになるかもしれない。夢は空想に翼を与えてくれる。きっと叶うと信じるほど、空高く舞い上がる。


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