RED HOT RUSSIAN PEPPERS


「イツカ、これいる?」


 マイさんが差し出したのはロケット型のリップスティック。外国のブランドでぶっちゃけ中身よりケースが可愛いイメージ。


「何色ですか?……だあ! めっちゃ赤!」

「すごいでしょ。これ以上無い赤だよ」

「可愛いですけど多分使わないかな」

「だよね」


 聞けばキャストからの貰い物らしい。元の持ち主も使いこなせず、いらなければ捨てて良いと言われ受け取ったものの、あまりの赤さに持て余してしまったそうだ。


「ダンサーとかS嬢とか良さそうだよね」

「完全にそっち系ですね」


「あらっおそろいで。おはよう」


 キッチンに入ってきたのはノノカさん。色白東北美人のザル。パーラメントに火を付けるとマイさんがリップを見せる。


「ノノカこれ使う?」

「まあ素敵。マイちゃん似合いそうじゃない」

「似合いすぎてギャグになるから持て余してんのよ。イツカも使わないって言うし」

「ちょっと良いかしら」


 ノノカさんは薬指にごく薄くリップを取って私の頬にぽんぽんと乗せた。


「え! 可愛い!」

「どうかしら。じんわり湯上がり美人さん」


 どれどれっ。マイさんの手鏡を借りて見ると確かに悪くない。血の色が透けたような自然なチークだ。気に入った。


「ノノカさんすごい! マイさん! これ私もらいます!」

「もちろん。さすがノノカ」

「うふふ」



 化粧品は無限大だ。ノノカさんの知恵を借りれば素敵ながらくたで一生遊んでいられる。たまには冒険しなくちゃね。


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