Lassie


「ふわあ」

「ジュリさんのあくび見ちゃった」

「わあ、いたの。やめてよー」


 シンクの下にiQOSを落としてしゃがみ込んだ時、油断したジュリさんが入ってきた。


「寝不足ですか?」

「ちょっとね。本が面白くて」


 本を読む方キャバ嬢がいる! 国で保護してくれ!


「誰の何て本ですか?」

「笑わない?」

「お約束します」

「名犬ラッシー」

 

 なんだ。宇宙の宝か。NASAを呼べ。


「何で笑われると思ったんですか? もはや古典じゃないですか」

「めいっ子の忘れ物でさ。挿し絵あったから何となく読んでみたらのめり込んじゃった。本なんか教科書ぶりだよ」

「ハマりそうですか?」

「悪くないかも」


 天を仰ぐ。神々の祝福が聞こえる。

 

「ジュリさん、仕事ばっくれてこれから飲みに行きま「ジュリさーん指名来たよー!」

「ん? ごめん呼ばれちゃった。客来たみたいだからとりあえず行くね。わんわん」

 



 本はいい。

 そこに自分が存在しないのがいい。

 孤高の犬は誇り高く走っている。



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