プラダを着たキャバ嬢


「イツカちゃんちょっと助けてくれる?」


 ユメミさんが更衣室のドアからひょっこり顔だけ出している。


「どうしたの?」

「背中のチャックが噛んだっぽい。変なとこで突っかかっちゃって着れないし脱げない」

「あはは。ではちょっと失礼して」


 胸が大きく開いてる分背中はフルクローズのセクシーなデザインだ。


「げ。ユメミさん無理に引っ張ったでしょ。生地つれてるよ。取れるかな」

「ええ嘘でしょ。今日初めて着るのに」

「ごめん私無理だわ。ピッて切れそう」

「イツカちゃんが無理なら誰がやっても無理だな。仕方ない。切れちゃってもいいから、チャック下げちゃってよ」

「まじ。罪悪感半端ないんだけど」

「ひと思いにやっちゃって」

「止む無し。恨むな」


 案の定、嫌な音がして生地とチャックの境目が破れてしまった。ユメミさんは他のドレスに着替えると患部を確認する。


「スパンコールでも縫い付けたら誤魔化せるかな?」

「いやあ悪目立ちでしょ。私が破っといて何だけど」

「いや、これは遅かれ早かれだな。着づらいドレスってどうせ着なくなるし。あっ体験入店用に店に寄付しようかな」

「良いんじゃない? これくらいなら気にしない子は気にしないだろうし」

「会社に給料返す謎ムーブ」

「あはは。ドレスは喜んでるさ」


 ユメミさんのドレスは体入組の人気No.1になった。気に入った衣装なら気分が上がるしやる気も出る。売上げに繋がる。ユメミさんはドレス以上の利益を会社にもたらした事になる。

 ちなみにこのドレスを寄付するきっかけを作ったのは誰が何と言おうとこの私だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る