ROCKING・HORSE・BALLE・RINA


「アタシのネックレスが」


 言葉はノイズのようにひび割れた。

 3連パールは千切れ、256分音符の真珠がフロアでスタッカートを奏でている。


 リナさんは甲冑アーマーリングをはめた拳で殴りかかるなんて事はせず、足元でうずくまっている客を片ひざ立てて助け起こした。


 この酔っ払いはよろけて転び、とっさに掴まったのがリナさんのネックレスだったのだ。


 客は握った左手をリナさんに差し出した。体温を吸った粒が返されるとリナさんは客が飲み残したグラスに白い音符を投げ入れた。



「死因は溺死なの」


 オーディエンス


「アンタは関係ない」


 ロックユー



 リナさんの切れ上がった目尻に酒気を抜かれた客は速やかに退場した。


 キッチンから見ていたキャストは一斉にフロアに飛び出すと手を叩き足を踏み鳴らす。


 こんなショーなら何度だって観たい。

 天国PUNK女王Vivienneも許してくれるだろう。


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