3枚のとんかつ


 照明の落ちたフロア。送りの車を待つ女が三人。


「今日は待つね」

「キャスト多いですもんね」

「失礼、お隣いいかしら」

「あれっ焼き鳥は?」

「アフターって言ってましたよね?」

「最後の最後に反故よ。お店を出た途端、やっぱり君の客にはなりたくないって」

「それで送り乗り損ねたんだ」

「罪深い……罪深い……」

「今まで更衣室で電話してたのよ。あやしてた。結局元気になってアフター行けば良かったって言われたわ」

「今更それを言うなよな」

「なんて恐ろしい客!」

「こっちはまた今度行きましょうね、としか言いようないじゃない?」

「いやタク代よこせくらい言って良いよ」

「そうですよ! てめえ次やったら二度と許さねえくらい言わないと!」

「うふふ。やだもう二人して。ああ、気が抜けたわ。おなかすいちゃった」


 時計を見る。


「あの、送り断ってご飯行きません?」

「わたしもいいのかしら。行きたいわ」

「みんなでいこ。送りはどうせまだ先だし、今なら断っても大丈夫でしょ」

「何食べますか? 牛丼はパス」

「ラーメン以外が良いわ」

「まつ屋は?」

「ありです」

「行ったことないわ」


 場面は変わり、とんかつを囲む三人の女。

 約一名、自身の肉を二枚の皿に配分し、対価としてキャベツを頂戴すると塩を振って食べている。


「気に入ったわ。美味しい」


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