HALLOWEEN DREAMIN ORCHESTLA
アイリさんが店で自分を傷付けたのは大事件だった。
マイさんが慌てる店長を押さえ付け、救急車より先に黒服の小峰さんに電話した。
傷はごく浅かった為、瞬間を見ていないほとんどの客達の前でアイリさんはフルーツナイフを持ってただ突っ立ってる女になってしまい、平日のクラブエルを恐怖のどん底に陥れた。
誰しも覚悟したその瞬間。
黒服その2の山下さんが「警察だ!」と叫びナイフを後ろから取り上げると「連行だ!」と続けアイリさんを担いで速やかに退場した。
あっけにとられる客及びキャストの面々。
カボチャのかぶり物をした小峰さんが入口からぬっと顔を出し全員が息をのむ。
「ハッピーハロウィーン」
「これが私が今朝見た夢です」
「あたしの時間返して?」
バニーガール姿のマイさんはSっぽさに拍車がかかっている。大変よろしい。
私はというと例年通り魔女だ。こういうのは鉄板で良いという先人達の教えだ。
「でもさ、ハロウィンイベントなんて客が本当に喜ぶなんて思えないよね。逆に恥ずかしいって嫌がる人もいるくらいだしさ。逆に営業かけにくい」
「全くもって同感です」
柄の悪いバニーガールがため息を煙で誤魔化す。
「おはようございまーす」
アイリさんの声だ。更衣室から短い悲鳴が聞こえる。何だろうと思いキッチンから顔を出すと血まみれのエロナースがいた。
「あっ魔女。可愛い。おはようございます」
「アイリさんすごい気合い入ってるね」
「今日終電上がりです! 友達の家でパーティーします!」
「いいね」
そっと引っ込みドアを閉めた。
苦笑いのマイさん。
「あれが正しい楽しみ方だろうね。世間と上手く付き合って、後は仲間内で楽しむ」
「私達もパーティーしますか?」
「あたしにこの格好で外出ろって?」
クスクス笑ってると客が来る気配がした。
フロアに戻るべく大きな三角帽子を頭に乗せた。トリックオアトリート。
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