Itsuka’s Style
「イツカさん、名刺作る予定あり?」
店長だ。大きな黒いファイルを持っている。
「いえ、まだ余ってるし、とりあえず大丈夫です。誰か注文するんですか?」
「新人さんがもう作りたいって」
「気合い入ってますね」
ヘルプを終えたマイさんが入ってきた。
「マイさん、新しい名刺、」
「いらない」
遮られた店長は逃げるように去って行く。ファイルが置き去りだ。
煙草を吸いながらページをめくっていく。カードのコレクションみたいに、たくさんの名刺のサンプルが入っている。
「見ると欲しくならない?」
「わかります。でも私次のデザイン決めてるんですよ。これ」
黒いマット地にシルバーの筆記体を指差す。
「ホスト用じゃないの? 何でこれ?」
「前回悩んだんですよ。元々黒にシルバーが好きだから。でも可愛げ無いと思って白地にメタリックピンクにしたんですけど、みんな似たような感じだし他店とじゃモロに被りまくってるだろうなって」
「なるほどね。柄物は?」
「却下です」
「まあイツカは柄物ってキャラじゃないよね」
「ちなみに私が最初に作った名刺はこれです」
指差すとマイさんが吹きだす。
「ハイビスカスと太陽? なんでまた」
「入店したての頃私めちゃめちゃ肌焼けてたんですよ。だから沖縄出身設定で行けると思って。一年ちょっと住んでたし。無理でしたけどね」
「愛おしいな」
「イツカさーん行くよー」
店長の声。
「じゃあ行ってきます。めんそーれ」
夜の私は何にでもなれる。
信じるか信じないかはあなた次第だ。
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