レディ・プレイヤーL


「客にどれくらいプライベート話す?」

「キャバ嬢以前の記憶は封印してるんで夜職一本になってからの事は基本なんでも話してますよ」

「本名は?」

「源氏名が本名って言い張ってます」


 やっぱそういう感じだよねえとため息をつく。


「何かあったんですか?」

「最近こだわる指名客がいるんだよ」

「まあ気になる気持ちは分かりますけどね。キャバ嬢の本名」

「好きなキャラの声優知りたい的な?」

「それはちょっと違うような」


 マイさんに作ったジャスミンハイを手渡す。


「あんまりしつこいなら、嘘の本名教えちゃえばいいんじゃないですか?」

「それやりだしたら嘘の趣味、嘘の家族構成、嘘の性癖ってどんどんわけわかんなくなりそう」

「もはや指名してるのはマイさんであってマイさんじゃないのでは、って感じですね。なんかSFみたい。そういう映画ありませんでしたっけ?」

「Siriと話してろって言いたい」

「それおもろい」



「イツカさんマイさんいくよー」


 1stステージを知らせる店長の声。

 虚構世界に飛び込んでいく。




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