第5話 妖精占いをしてもらう
「ご馳走さまでした。とてもおいしかったです!」
「喜んでもらえて嬉しいわ」
ロザリーのところにリアが飛んできて、手を胸に当てた。
「ご主人さま。助けていただいたお礼をしたいのです」
「お礼? そんな気を使わなくていいの。元気になってくれただけで嬉しいんだから」
断ろうとしても、リアは「それでも……」と食い下がってきた。
「命の恩人であるご主人さまの役に立ちたいんです。……そうだ、占いに興味ありますか?」
「興味ある……! というか、好き!」
占いと聞けば心が躍る。行商の占い人に、興味本位で手相を見てもらったこともある。そのときに言われたことは、記憶にない。一喜一憂して、忘れてしまった。覚えてないけど、自分の隠れた部分を知るのは楽しかった。
「それならぜひ、占ってみましょう!」
「楽しみだわ。お願いします」
「占いの材料に花びらが何枚か必要なんですが、この家にありますか?」
「庭で育ててるカモミールのハーブとかどうかな?」
「それで大丈夫です」
カモミールの白い花を摘んで、花びら一枚ずつ取った。ちょっと可哀想だけどね。
リアの言う通りに、机の上に花びらを円を描くように並べる。
さて、準備は整った。
「知りたいことはありますか?」
「憧れのあの人に再会できるか教えてほしいわ」
「再会できるか、占ってみますね」
リアは花びらにフーッと息を吹きかけた。甘いにおいとともに花びらが空気に巻き上げられて、机に散らばる。
その花びらの位置を見たリアは、「これは……!」と驚きの声を上げた。
どうなったの? 気になる。私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「どうかな?」
「……これは、すでに出会っているということですね」
出会っている? つまり、どういうこと?
リアの占いの結果を聞いて、謎が深まった。
「そうなの? 昔、助けてもらったことがあったから、そのことかしら。もう一つ占ってほしいわ。これからは出会える可能性ある?」
「占ってみますね」
もう一度、花びらを並べ直す。
そして、リアは花びらにフーッと息を吹きかけた。
机に散らばった花びらの位置をリアは見る。
さあ、先生。結果はいかに……!?
「実現します……そう遠くない未来に出会っているはずです。そうだ、いつ出会えるのか見てみましょうか?」
「それは大丈夫よ。詳しく占っちゃったら、これからの楽しみがなくなっちゃうからいいわ。いつか出会えるとわかっただけでいいの」
「そうですか。……あの、ご主人さまの憧れのあの人ってどんな方でしょうか? もしかして、ご主人さまの好きな人ですか?」
ずっと気になっていたのだろう、リアは聞いてきた。
好きな人かと聞かれると照れてしまう。そんなんじゃなくて、もっと崇高な感じ。遠目で見ているだけで嬉しいのに、同じ空間にいたら死んでしまいそうなレベル。もし再会してしまったら、私、呼吸できるの?
「好きっていうか、大尊敬していてね。大魔法使いのグロウさまよ。小さい頃に助けてもらったことがあってね。昔からずっと憧れなの」
「大魔法使いさまですか! 再会できるといいですね!」
妖精界でも名前が轟いているのかな。きっとそうだろうな。
「大魔法使いさま」だけで話が通じたんだから。
「そうね」
「ご主人さま。私も一緒に探します!」
「ありがとう。リアも一緒に探してくれると頼もしいわ」
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