第4話 僕は真実の愛を見つけた(孝視点・☓☓視点)
(孝視点)
ああ、イライラする。
一体なんで涼子は帰ってこないのか!? せっかく痩せてマッチョになって社内一のイケメンと呼ばれるようになったこの僕が抱いてやろうっていうのに!!
いや、涼子のことはもう愛してなどいない。あんな女はオナホと一緒だ。
世間からは不倫と呼ばれるかもしれないが僕は真実の愛というものを見つけたのだ。
そう、真実の愛だ。
僕は小さな頃からぽっちゃりしていてドン臭く見える子供だった。そのために大人からも子供からも侮られ、舐められて真っ当に扱われて来なかった。
僕はそのことにずっと不満を抱いていた。そんな僕だから涼子と結婚するまでは童貞だった。
涼子とは会社で出会った。彼女は地元採用で入社してきた後輩社員だった。
地方から就職してきて営業職としてこき使われていた僕は、女子社員の中で唯一優しくしてくれた涼子のことを好きになった。
学生の頃も僕は優しくしてくれたり、親しく話しかけてくれる女の子のことをすぐに好きになって告白したりしたこともあった。だけど結果はいつも惨敗。僕に告白された女の子達は冷たい表情に変わり「そんなつもりはなかった」「勘違いしないで欲しい」と言って断られた。
要は人畜無害に見える僕から好意を向けられるのは彼女たちの中には可能性としてすら存在していなかったのだ……侮られ舐められていたのだ。
涼子はある意味では違った。彼女は良い言葉で言えばふくよかな男性が好きな女性だった。ストレートにきつい言葉で言えばデブ専……そう、涼子はデブ専だったのだ。
そのことに気付かなかった僕は涼子が僕の内面を見て好きになってくれたのだと思い彼女に夢中になった。
何度かデートを重ねて、僕は涼子で童貞を捨てた。セックスにお腹のお肉が邪魔になることを初めて知った。僕のものは大きいほうらしくお腹のお肉があってもしっかりと行為に及ぶことはできた。
涼子はスタイルが良くて胸も大きくてたまらなく興奮した。ただ、彼女は初めてではなかった。仕方ないことかもしれないけど僕は傷ついた。
だけど外見ではなく僕の中身を見て好きになってくれたと思い彼女にプロポーズした。
「僕と結婚してください」
「はい、2人で幸せな家庭を築いていきましょう」
そうして僕らは夫婦になった。
それからは絵にかいたような幸せな家庭。そのままでいればいつか子供も生まれて幸せな未来が約束されていたと思う。
だが、僕は致命的なまでに幸せ太りをしたらしい。涼子の作ってくれる美味しい食事(彼女は炭水化物料理の天才で特にジャンバラヤは絶品だった)にコロナ禍の巣ごもり生活での運動不足。
僕はメタボリックシンドローム一直線でリモートで会う上司や女子社員にもバカにされその年の健康診断でD判定を食らってしまった。
慌ててダイエットするためにトレーニング用の機器を購入して生まれて初めて筋トレやダイエットをした。
「ええ~、孝くんはぽっちゃりしているくらいが可愛いのに」
涼子の言葉は嬉しかったが悪魔の誘惑でもあった。僕は必死でダイエットした結果意外な事実が判明した。
痩せるに従って女子社員や道行く女の子たちが僕のことをチラチラと見てくるようになったのだ。ひょっとして……僕はさらにトレーニングに励む。
コロナウイルスの患者数の減少と比例するように僕の体重は減り続け、しっかりとした細マッチョの体を手に入れると世間は手のひらを返した。
モテまくるようになったのだ。不要な駄肉成分がない僕はイケメンだったのだ。
そうして僕は好きな女を選べる立場になった。選んでやったと上から目線の涼子みたいな女はもういらない。
これからは自分の意志で欲しい女を手に入れるのだ。
それにしても……僕の真実の愛の相手である彼女は今……仕方ない。オナホ代わりの妻も帰ってこないし今日は街に繰り出そう。
(☓☓視点)
昔から森川涼子という女は見る目がないと思っていた。わたしとは全く趣味が合わないしへんなものばかりにハマるし、一番の趣味が相撲観戦。テレビで見るだけで飽き足らず千秋楽には国技館まで足を運ぶ。
そんな涼子という女の結婚相手は案の定というか想像通りのおデブちゃんの竹中孝だった。
私にとって全く興味がわかなかったその男はコロナ禍の巣ごもり中になぜかダイエットを始めあれよあれよとシュッとしたイケメンになってしまった。
まるで肉塊を彫刻刀で削ったらダビデ像が出てきたような衝撃!
私は恋に落ちた。
あの女よりも若くて美人な私の誘惑に孝はあっさりと乗って来た。処女のフリをして近づくと「君こそ僕の運命の女だ。ついに僕は真実の愛を見つけた」なんて言葉まであっさりと引き出せた。
そのまま、性行為に及ぶうちに私は妊娠した。堕ろせなくなる22周目まで待ってから彼に告げる予定だ。
「真実の愛」があるのだからあの女を捨てて私に乗り換えてくれるだろう。
ふふ、昔から涼子という女のことを嫌いだった私があの女の旦那を寝取る日が来るなんて……その日を想像すると頬がゆるんでしまうのを止めることが出来なかった。
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