第35話 もくろみ

「秘密裏に蘇生薬を手に入れるには、それなりの大義名分が必要になったわけだ」

 アインは言った。

「蘇生薬?」

「お前の血。つまり『神獣エリス』の血だ」

 あぁ、そうか。

 伝承によれば、私の血には亡くなったひとをよみがえらせる力があるんだっけ。

「神官長、いや、もっとずっと昔から神官たちのあいだでもくろまれてたのかもしれない。『創世記』から楽園エタアに関する一切の記述が削除され、『神獣エリス』もいつのころから、人々に災厄をもたらす『死を招き』に書きかえられるようになった。人々がお前を恐れ、その死を待ち望むようになれば、神官長は十七歳を迎えた『死を招き』を葬り去り、ディン教徒の信頼を得て、かつ、誰にも不審がられることなく奇跡の蘇生薬を手に入れることができる。そういう計画だったのだろう」

 虚偽の記述――今まで私はそんな呪いに縛られていたの……。

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