第33話 救世主

 神獣エリス!?

 ガツン! と頭を殴られたような衝撃がニカを襲う。

 待って、待って、待って。

 神獣エリスって、確か。

 さっき、アズーラさんが教えてくれた話のなかで。

――聖獣エリスは世界が危機に瀕したとき、あらわれるという不思議な獣。

――ありとあらゆる呪いを打ち砕くことができ、その血は死者をよみがえらせることができる。

――エリスは何度でも復活し、エル・ディンとともにこの世に光をもたらすのだ。

 その伝説の獣が私!?

『死を招き』じゃなくて、世界を救う存在なの?

 でも、そんなこと言われても……。

「わぁーっ! 呪いの子じゃなかったのはよかったけど、いきなりこんな姿にされても困る~っ!」

 ニカはすっかりパニックになり、縦横無尽に暴れ出した。

「参りましたな。怪獣大戦争が始まりましたぞ」

 とばっちりを受けないよう、そそくさとエンデが部屋の隅に引っこんだ。

「安心しろ。お前がその姿でいられるのは、ほんの数分だけだ。今のお前にはどこにでも行ける大きな翼がある。さぁ、ともに外に出よう」

 悲しみに打ちひしがれるニカをアインがなだめる。

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