第30話 機は熟した
「ほざけ! そんな薄汚い風体のお前に今さらなにができる? もはや従えている魔物すら呼び寄せることができぬだろうに」
神官長が、ふたたび白銀の杖をアインに向ける。
ここでどんなに抗ったところで、何度も何度も雷のえじきになるだけだ。
「そうだな。今のオレは、アンタには勝てん。だがな」
アインは、ガラス窓に視線を投げた。
かすかではあるが、外から光が差しこんでいる。
夜明けだ。朝日が顔を出したのだ。
アインが安堵のため息をつく。
「機は熟した」
アインは渾身の力をこめて、ニカの腕を取る。
「逃がすか!」
ニカを止めようとする神官長。
だが、神官長の前にエンデが飛びかかる。
エンデは神官長の顔をひっかくと、アインの足元に舞い降りた。
「焦げた匂いもなかなかそそりますな、ぼっちゃん」
目を輝かせながらアインを見上げるエンデ。
「ひとをバーベキュー扱いするんじゃない」
喰えるものなら喰ってみろ。
神官長は、片目を負傷し、フラフラとおぼついた足取りながらも、
「外には出さん。このときを、この朝を十七年間待ち望んでいたのだ」
と、しつこくふたりの行く手をはばもうとする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます