第26話 礼拝堂

 永遠に続くかと思われた階段を上っていくと。

 目の前に部屋があらわれた。

 部屋のあちこちにろうそくが並べられており、ぼんやりした光を放っている。

 部屋の中央には裸足の幼い子どもの姿をした天使。そしてもう一体、靴をはいた十代半ばくらいの少女の姿をした天使の像が祀られている。

 エル・ディンと、アヌーク・ディン。

 東には、細やかな装飾が施された、壁いっぱいに広がる巨大なガラス窓。

 どうやら、ここが礼拝堂らしい。

「塔の最上階にこんな場所があったなんて……」

 ニカは目を見開いて、あたりを見まわした。

 香が焚かれ、静かで神聖な雰囲気に満ちているが、壁にはじんわりと赤黒いシミが広がっている。

「脱走しようとしていた異教徒たちを、ここで密かに始末していたってわけか」

 そうアインがつぶやくと、

「左様」

 重たく、低い声がアインに応じた。

「神官長さま……!」

 ニカの全身を恐怖が包みこむ。

「われらディン教徒に刃向かう者は、いかなる存在であれ、許されないのだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る