第25話 迫る脅威

 感情を爆発させていたアズーラだったが、突然両手で頭をおさえてだまりこんだ。

「なに……? 気持ち悪い」

「ぼっちゃん、厄介なのが近づいていますぞ」

 警戒するように、エンデが全身の毛を逆立てた。

「案ずるな。脅威が迫っているということは、それだけオレたちの目的にも近づいてるということだ。あともうひといき、気を抜くなよ」

 アインはしっかりとニカを抱きかかえたまま、再び階段を上りはじめる。

「あの私、自分で歩けますから!」

 香りの魔法が解けてきたニカは、アインの腕から下りようとしたが。

「ダメだ。今ここでお前を離すわけにはいかない」

 アインは、はっきりとその申し出を却下した。

 ニカの顔にサッと赤みがさし、心臓がドキドキ騒がしくなる。

――自分の望みのためとはいうけど、このひとはどうしてこんなに一生けん命、私をこの塔から連れ出そうとしてくれているんだろう?

 ニカは深緑色の目で、そっとアインを見守り続けた。

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