第22話 エンデ

「これはこれは。ディン教徒の方々、お初にお目にかかります。わしの名はエンデ。『創世記』ではおなじみの存在ですな」

 そうあいさつをした後、エンデは神官たちに飛びかかった。

 口ぶりこそていねいだが、やりかたはまさに血に飢えた魔物そのもの。

 神官たちの、のど首に、肩に、胸にかじりついては、無我夢中でその命を奪っていく。

「相変わらずのバイオレンスジジイねぇ」

 アズーラが不快そうに口元に手をあてる。

「じーさん、一気には殺すな。ひとりくらい息のあるヤツ残しとけ」

 アインの声に、エンデはピクリと耳を動かして、

「気が向いたらそうさせてもらいますよ」

 と、血がべったりついた顔をアインに向けた。

「あ……」

 壮絶な現場にニカは思わず気を失いそうになる。

「いっけなーい、若い子にはちょっぴり刺激的だったかしら? だけど、こいつの日常っていつもこうなの。ちょっと気を楽にしててね」

 アズーラは動揺するニカをやさしく抱きしめた。

 甘く、どこか冷たい香りがニカを深い安らぎに誘う。

 しだいにニカはウトウトとしはじめた。

「落ち着いたか」

 アインがニカのほうをふり返る。

 アズーラはフンッ! と胸をはって。

「あたしの香りにはクマだろうが、アクマだろうがかなわないわよ。ほら、早く抱きかかえてあげなさい。色男」

「ちょっと待て。あのままじゃ、じーさんが全員喰い殺しかねん。まだ死んでないヤツを見つけないと」

 アインはまったく表情を変えずに、血まみれの神官たちのもとへ向かった。

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