第19話 エタア万博①

 さかのぼること二百年前。

 天使エルとアヌーク・ディン姉妹の住む楽園をテーマとした博覧会が開催された。

 その名も『エタア万博』。

 建築、美術、工芸、音楽、それから嗜好品に至るまで、当時の最新鋭の技術を駆使してつくられたもののみで構成された、それは大規模な博覧会だったという。

 だが、出品物には、いずれも様々ないわくがあった。


 たとえば『魔神の心臓』と呼ばれるルビー。

 波打つ心臓のように赤く、鮮やかに光るさまから『魔神の心臓』と名付けられたルビーは、エタア万博の見物の一つとなった。

 しかし、はじめから不吉な逸話があった。

 掘り出すのに多くの奴隷を犠牲にし、職人たちは細工を施したあと、いずれも病死。数々の大富豪がその宝石をわが物にしようとしたが、ある者は殺され、またある者は自殺。持ち主に次々と死をもたらす赤く美しい宝玉は、やがて吸血ルビーとうわさされるようになった。


 ほかにも様々なものが存在する。

 もうひとつは、戦火で犠牲になった男女をモデルにした歌唱人形。

 髪や洋服、骨まで部品に用い、まるでその姿はあの世からよみがえったように生気にあふれていたという。ただし、その歌声を聴いたものはたちまち魂を吸い取られたらしい。

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