第17話 追撃

 ヒュンッ!

 アインの耳に風を切る音が届いた。

 矢か。

 この先に神官たちがひそんでいる。

 殺気に満ちた気配。

 さっきよりも人数が多そうだ。

「下がってろ」

 アインはニカを自分の背後にいさせた。

「さて、どうされる? うまく切り抜けられますかな?」

 少しおもしろがっているような老人の声が聞こえる。

「考えている時間などない」

 アインは、どこかあきらめたようにつぶやいた。

「かかれ!」

 合図とともに、アインに向かっていっせいに矢が放たれた。

 矢はアインの胸を、腰を、足にも貫通し、全身から鮮やかな血があふれ出て、ねずみ色のコートは、あっという間に赤く染まった。

「きゃあ――」

 思わず悲鳴をあげそうになったニカの口を、何者かが手でふさいだ。

 爪の長い、しなやかな手。

「しーっ、静かにして。大丈夫だから」

 いつの間にか、ニカの背後には見知らぬ女性が立っていた。

 ずいぶんと奇妙ないでたちだった。

 ニカに負けず劣らずの長い髪をはじめ、着ているロングドレスも、ヒールの高い靴も、手の爪の先も、メイクやピアス、ネックレスなどのアクセサリーに至るまですべて真っ青。

「あなたは……?」

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