第16話 自由への逃亡

「どういうことですか!?」

 じゃあ、あのとき彼らを殺したのは私じゃなくて他の誰かだっていうの?

 でも私になんの力もないなら、どうして私はここにずっと閉じこめられていたの?

 次々に分からないことが押しよせて、ニカの頭はパンク寸前。

「ニカ! ニカ!」

 どこからか、ニカを呼ぶ声がする。

「お父さんたち、お母さんたち!」

 ニカが生まれてからずっと世話をしてきた囚人たちが、心配そうにニカを見つめている。

「あんた、ニカをどこに連れ去る気だ?」

「ひどい目に遭わせる気じゃないだろうね!」

 いぶかしげな視線を向ける囚人たちに、

「安心しろ。確かにオレはここから彼女を奪いに来たが、傷つけるためじゃない。こいつにかけられた忌まわしい呪いを解いて、ここから自由にするためにやって来たんだ。あんたたちが今までやってきたように、これからはオレが守ってみせるから」

 と、アインは告げた。

 ニカはわずかに顔を赤らめたが。

「そして、ここから自由になった暁には、オレをあの世送りにしてもらうんだ」

 って、またそれ!?

 どうして私がこのひとを殺さなくてはいけないの?

 それに、さっきからずっと引っかかっていたことがある。

 神官長も、このひとも、事あるごとに口にしていた言葉。

「機が熟すって、なんのことですか。もし、そのときが来たら私はどうなるんですか?」

「それは、そのときになったらすべて分かる!」

 アインはニコッとニカにほほえみかけた。

「そのときじゃなくて、今教えてほしいんですけど!」

 つっかかってくるニカに、アインはポツリと。

「そうあせらなくてもいい。お前の未来が明るいことだけは確かだ」

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