第15話 偽り

「あ、あの」

 ニカが、おずおずとアインを見上げる。

「私をどうするつもりなんですか?」

「言ったろう。お前の手で、オレを殺してほしいと」

 淡々とアインは答える。

「どうして私に――」

「これはお前にしか頼めないんだ」

 ニカの胸に暗い影がよぎる。

「そんな……さっきも伝えたでしょう。私は、二度とそんなことなんかしたくないんです」

「二度と?」

 アインの眉がかすかに動いた。

「十三歳のとき、この塔に侵入してきたひとたちを、私は葬り去ったんです。『死を招き』の呪いの力で。誰のことも殺すつもりなんかなかったのに!」

 ニカの目に涙がにじむ。

「そうか――」

 静かにうなずいたあと、アインは口を開いた。

「お前、まんまとだまされたな」

 え……っ!?

 思いがけない言葉に、ニカの胸がドキドキと脈打つ。

 だまされた?

「お前に誰かを殺す力なんてない。というか、お前にはなんの力もない。まだ機は熟していないのだから」

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