第14話 強奪

 世界一不運……?

 ニカの目が点になる。

「キィヤァハハハハハッ!」

 突然耳をつんざくような若い女性の声が聞こえた。

 だが、さっきと同じように姿が見えない。

「ダッサ! 超残念。フツー自分で言う? そーゆーこと」

「……誰のせいだと思ってる」

 アインはいまいましそうに眉間にしわを寄せた。

「貴様、『死を招き』の仲間か?」

 神官たちの、聖槍を持つ手にいっそうの力がこもる。

 だが、アインは飄々として、

「バカなことを言うんじゃない。生まれてこのかた十七年間、人々に忌み嫌われながらこの塔に幽閉されていた女に仲間などいるものか」

 ニカの胸に、その言葉がグサッとつき刺さる。

 確かにホントのことだけど、そんなにハッキリ言わなくてもいいのに……。

「わわっ?」

 不意にニカはアインに両腕で抱きかかえられた。

「オレはこの女を奪いに来ただけだ。じゃあな」

 と、ニカを抱えたまま、アインは一直線に神官たちに突っこんでいく。

「少しのあいだ、息を止めておけ」

 アインがニカの耳元でささやいた。

「え……? は、はい」

 よく分からないまま、言われたとおりにすると。

「うわぁっ!」

 一瞬のうちに神官たちの手から聖槍が転がり落ち、彼らは力なく地面に倒れこんだ。

 行くぞ、とアインはニカを抱えたまま通路を走り出した。

「ぼっちゃん、油断召されるな。敵はこの者たちだけではありませんぞ。あと何人いることやら」

 老人の声がアインをたしなめる。

「ああ、分かっている」

「でも、どうやって脱出するつもり~? ちゃんと考えてるんでしょうね?」

 若い女性の声がアインにささやく。

「後のことは知らん。だが、機が熟せばどうとでもなる!」

 アインはきっぱりとそう断言した。

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