第12話 侵入者

 そして時は経ち。

 明日の朝になれば、ニカは、生まれてはじめて塔の外に連れ出され、そしてその命を終える。

 さようなら、お父さんたち、お母さんたち。

 忌まわしい存在であるはずの私のことを、今まであたたかく見守ってくれてありがとう。

 でも……やっぱり死ぬのはこわい。

 私がこの世から消えれば、みんなが幸せになれるのに。

 朝を待つのが、とてつもなくつらい。

 今が真夜中なのか、夜明けなのか。

 それすらも私には分からない。

 こんなにつらい思いをするくらいなら、いっそのこと、今すぐに心臓がはりさけてしまえばいいのに!

 そのときだった。

 バキイイッ! という鈍い音とともに、ニカの壁に亀裂が入ってくずれた。

 あらわれたのは、ねずみ色のロングコートを着た背の高い男。

 長いくすんだ赤色の髪が、ゆるやかに波を打っている。

 目鼻立ちのくっきりした、端正な顔だちの青年だが、その顔色は青白く、紫色の瞳には、異様な光が満ちあふれている。

「お前が『死を招き』ニカか。頼みがある。オレを殺してくれ」

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