第9話 異形の存在
「さあっ、答えろ!」
もう一本ナイフが勢いよく放り投げられる。
囚人たちは必死にニカを隠しとおそうとするが、当のニカの心は揺れていた。
このままじゃダメ! 私を見守ってくれていたお母さんたちを危険な目に遭わせてしまう!
ニカは、バッ! と毛布をはぐと、民衆たちの前にその姿をあらわした。
背中まで伸びた鮮やかな紫の線が入った純白の髪があらわになり、深緑色の瞳が獣のようにきらめいている。
「うわぁ!」
さっきまで憤っていたはずの彼らが、瞬時に後ずさった。
「コイツが『死を招き』……!
自分たちとは明らかに様子の異なるニカを見て、さすがの彼らも恐怖を隠しきれない。
だが、このまま怖じ気づいて引き返すわけにもいかなかった。
「よくもこの町に災いをもたらしたな。『死を招き』め」
男がナイフを手に、憎々しげにニカを見つめる。
「私が、災いを――?」
「凶作や疫病でゼアの町は傾くいっぽうだ。どんな魔法を使ったか知らんが、オレたちをどん底まで苦しめた罪、その命をもって償ってもらう!」
「ちがう! 私はこの町が不幸になることなんか――」
必死のニカの言葉をさえぎるように、男の手からナイフが放たれた。
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