第7話 暴動

「静まりなさい。まだ『そのとき』は来ていないのです」

 神官は民衆を諭した。

 だが、怒りに燃える民衆たちがそんな言葉に耳を貸すはずもなく。

「もう待つことなんてできるか!」

「原因は分かってんだ!」

「さっさと始末しちまえ!」

 彼らは止める神官を押しのけ、罪人の塔に押し入った。

「『死を招き』を探せ!」

「ヤツはどこだ!?」

「たとえ子どもだろうが、容赦しないぞ!」

 今まで聞いたことない荒々しい声に、怒りに満ちた民衆の足音が、ニカの耳に届き、ニカはベッドのなかで身をかたくする。

 どうしたの? こんな夜中に、なぜ多くのひとがこの塔にやって来たの?

「ニカ、こっちへ!」

 女の囚人のひとりがニカの部屋に飛びこんできて、ニカを抱えて自分の部屋に運びこんだ。

「さぁ、今夜は私たちといっしょにいましょう」

「あの騒ぎはいったい……?」

 ニカは部屋にいる女の囚人たちを見上げた。

 だが、誰もニカの問いには答えず、ニカを抱きしめながら

「大丈夫よ」

 と、くり返すばかりだった。

 けれども、塔の騒ぎはおさまるどころか、ますます勢いを増していき。

 ついに、ニカのいる階にも民衆が踏みこんできた。

「『死を招き』を出せ!」

「出て来い、『死を招き』!」

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