第6話 元凶
囚人たちもニカの「真相」を話すことはかたく禁じられていた。
もし、事実を話せば絞首刑になると脅されていたせいもあったが、それよりも、ニカが自分の運命に気づいてひどく苦しむのが耐えられなかった。
「あぁ、ニカ。いつかお前の背中に、名前どおり本当に翼が生えてきたらいいのに。そうなったら、この牢獄を飛び出して、自由に外の世界に出られるのに」
囚人たちは、毎晩眠る小さなニカを抱きしめながら、いとおしそうに背中をなでた。
けれども、ニカには希望の翼が舞い降りるどころか、ある日思わぬ異変が起こった。
ニカが十三歳になったある夜。
罪人の塔は、たいまつを持った民衆に取り囲まれた。
「『死を招き』を討て!」
「すべての元凶はあいつのせいだ!」
もう夜も更けていたが、あまりの騒がしさにニカは飛び起きた。
「なにが起きてるの……?」
「『死を招き』さえ、あいつさえいなくなれば、元の暮らしに戻れるんだ!」
「そう! このところの不作も、疫病もみんなあいつのせいよ!」
ここ数年、ゼアでは異常気象が続いていた。
夏には豊作になるはずの小麦がほとんど実らなくなり、おまけに深刻な熱病の流行まで広がった。
あれこれ手を尽くしても、被害は拡大するばかり。
そこで民衆たちの心によぎるものがあった。
これは『死を招き』のしわざだ。
あいつがこの町に災厄を呼び始めたのだ。
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