第5話 すべてはお前のため

 呪い!?

 思いがけない言葉に、ニカはおびえた。

「私は、呪われているのですか?」

 神官は無言でうなずいた。

 そんな、どうして私が。

 私は、なにも。今までなにも悪いことなんてしてないのに。

 深い絶望に包まれているニカに、神官は静かに語りかける。

「心配することはない。あと七年。そう、あと七年の辛抱だ。お前が十七歳になったら、エル様とアヌーク様のお導きで、お前は解放されるのだよ。それまではここにいるのだ。お前になんらかの災難があってはいけないからね」

 絶望に打ちひしがれて自ら命を絶たれては困る。

 期を待たねば。そうでないと災厄が巻き起こる。

 塔での暮らしは辛いかもしれないが、これはみんなお前のためなのだよ。

 明るいところに出さないのは、外の悪魔に狙われないため。

 最低限の食事しかふるまわないのは、暴食の魔物に取りつかれないためだ。

 すべて、すべて、お前のため。分かっておくれ。

 神官たちは事あるごとにニカにそう伝えた。

 疑いの心などまったくないニカは、その言葉をまっすぐに信じた。

 悪魔はすでに目の前にいたことなど、まるで気づかずに。

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