第11話 マヨイガの森の湖畔でディナー

俺は、風呂上がりのミネルヴァにドキマギしていた。

今日は、随分薄着だからだ。

キャミソールに、ホットパンツ。

しっとりと濡れた金髪。

上気した白い肌が露になっている。


「ミネルヴァ、薄着過ぎないかな?」

「え?そうかなぁ」


そう言いながらも、ニヤニヤと笑みを浮かべている。

ああ、わざとなのか。

俺を困らせようとしているのか。

ステイステイ、落ち着け…俺。

ミネルヴァが、可愛いからって照れたり視線を逸らしたりしたら弄られるだけだ。

ここは、ポーカーフェイスを貫くんだ。

よし、頑張ろう。


「そう言えば、お酒は飲めるの?」

「うーん、あまり飲んだことがないんだよね」

「そうなんだ、幾つか手持ちがあるから飲んでみる?」

「うん、お願い」

「初心者なら弱めで甘いほうがいいかな」


俺は、冷蔵庫の肥やしになっている缶チューハイを取り出す。

レモン、グレープフルーツ、梅、桃、グレープ、白ぶどうの6缶である。


「好きなのどうぞ」

「なんか変わった形のコップだね」

「これは、缶と言って開封しない限り長期保存ができる入れ物だよ」

「この絵の飲み物なんだね」

「桃、グレープ、白ぶどうがオススメかな」


俺は、ミネルヴァの前に3缶を置く。

彼女は、缶チューハイから目が離せなくなる。


「別に、これからいつでも飲む機会はあるからね」

「あはは、そうだよね。

よし、決めたよ。このピンク色のにするよ」

「桃だね、じゃあ他のは仕舞っておくよ」

「あーぁ」


俺は、ぷふっと笑ってしまう。

とても可愛い生き物だと思って。

ミネルヴァは、頬をふくらませながらむーっと唸る。

俺は、料理を盛り付けする。

せっかくだから料理の写真も撮ることにした。

商品撮影用のミニスタジオを設置していく。


「ねえねえ、何してるの?」

「料理の撮影をしようと思ってね」


食べ物の撮影で寒色背景なんてナンセンス。

暖色ライティングをスクリーンの裏から通そう。

あ、電気…発電機も出さなきゃな。

非常用の発電機が自宅と車、船に…あっ、船があるじゃん。

え、船もポケットに…ある!


「ねえ、ミネルヴァ」

「どうしたの?シンスケ…すごい百面相して面白いけど」

「この湖ってヌシいると思う?」

「いるとしても、普通の竿じゃ折れちゃうと思うけど…カルデラ湖だから中心は凄く深いとこにあるかもだし」


確かにそうだ。

だが、それならそれで可能だ。

なんたって、船は船でもクレームの付いている大型船だ。

ある時期、巨大魚釣りがマイブームになってクレーム付きの大型船とクルージングが出来る小型船の2種類を所持した。

と言っても、どちらも貰い物。

旅先で仲良くなった漁師が廃業する時に譲り受けたものだ。

良かった、付いてきてくれて。

俺は、ミニスタジオの設置をしながら感慨にふけていた。

小型のスタジオでいいか、USB給電式だからモバイルバッテリーで済むし。

俺は、大型のミニスタジオを1度仕舞い、テーブルに置ける撮影ボックスを取り出した。

大きさは、20立方cm。

前面は、大きく開けていて左右は半円状に窪みがある。上部に2つのライトバーがある。

下部から背面までは弧を描いている。

その部分が、ライトパネルになっていて今回はフライだから赤にした。

他にも、黄色、黒、緑、青と変更出来る。

ここに、フライの盛り合わせを設置。

三脚を装着した一眼レフをマクロレンズに換装させ、レリーズを装備する。

今回の三脚は、前後にスライドができるタイプでギリギリの所まで近づく。


「シンスケ。凄く美味しそうに見えるんだけど」

「まあ、食べ物が美味しく見えるような視覚効果があるようにセッティングしてるからね」


ライトバーがLEDだから小さくてもしっかりライティングしてくれるからいいな。

ライトパネルが、黄色だと同色で映えないけど赤だからフライが映えるな。

おっと、タルタルソース掛け忘れてる。

俺は、スプーンでマスのフライにタルタルソースを掛ける。

ちなみに、この撮影用は俺の分である。

ミネルヴァの分はしっかり別に用意してある。

俺は、レリーズを半押しして露出を測る。

スタジオ撮影なら1/125でいいだろう。

俺はらマニュアルモードにしてシャッター速度を1/125にして再度半押しする。

絞りF11か。

プラスマイナスで撮ってみよう。

まずは、F11。

レリーズを半押しから全押しする。

カシュっと音がして撮影が完了する。

次は、F8。

レリーズを半押しから全押しする。

カシュっと音がして撮影が完了する。

最後に、F16。

レリーズを半押しから全押しする。

カシュっと音がして撮影が完了する。

絞り値は、明るさのことだ。

ビューモードで確認してみる。

そうしてると、後ろからミネルヴァに抱き着かれる。


「シンスケ。お腹すいたァ」

「はいはい、ごめんね。お待たせ」

「うわぁ、やっぱりすごく美味しそう。

でも、なんで3枚撮ったの?」

「明るさの違いなんだよ。

最初は中間。次に暗め。最後が明るめ。

基準からずらすことで新たな発見があるのが写真の奥深さなんだよ」


俺としては、F16で撮影した方がメリハリがあっていい気がするな。

さあ、ご飯を食べよう。

ミニスタジオを片付けて食卓を整える。

ミネルヴァの前には、熱々のフライをポケットから出す。

別の皿にロールパンを4つ載せる。

俺の前には、撮影で使った方を置く。


「シンスケの料理に付いてるソースは何?」

「ああ、これはタルタルソースだよ。ミネルヴァの分もあるよ」


俺は、ジャムジャーに入れたタルタルソースを食卓の真ん中に置いた。


「さあ、食べようか。

朝に取った山菜とワカサギ、マスのフライだよ」

「頂きました。ホクホク、アツアツだぁ。

シンスケのご飯は、いつも美味しいね。

ありがとう」

「ふふ、どういたしまして」


俺も食べ始める。

身が締まっていてかなり美味しい。

どこか甘みすら感じる。

これは、塩だけでも良かったかもしれない。

口の中が幸せだ。


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