第10話 マヨイガの森で湖釣り

拠点を背にして、釣りを始める。

ロッドを湖へと投げる。

サイドハンドキャスト(ロッドを持っている手側から投げる方法)で、5m先へ投げ入れる。

ポシャっと音を立てて、ルアーが湖に沈む。

オーバーヘッドキャストだと遠くに飛ぶけど狙いが甘いんだよね。

デッドスローリトリールでゆっくり様子を見る。

ストップ&ゴーを織り交ぜる。

リトリールは、リールを巻くことで。

デッドスローは超低速の事。

デッドスロー(超低速)、スロー(低速)、ミディアム(中速)、ファスト(高速)と4段階の速さがある。

これによってあたかもルアーが生き物のように動いていることを錯覚させる。

そんなことをしているとアタリ(魚が仕掛けを引っ張って伝わる感覚)がある。

確かな重みが、タックル(竿、リール、リールに巻く糸までの一式)全体に感じる。

緩急を加えながらアワセ(糸を引っ張って魚のアタリに反応する操作)を行う。

まずは、アワセとリールを巻いてアワセるテクニック「巻きアワセ」を行う。

魚側が引っ張って勝手にハリに掛る「向こうアワセ」と言うテクニックもある。

そこからは、労せず釣果を上げた。

そして、写真を撮る。

まあ、見たままマスだった。

地球と同じ生き物が居ることに驚いた。

まあ、マスはマスだが「マヨイガマス」と言う固有種らしい。


「マス…マス…どうしようかな」


俺は、クーラーボックスにマヨイガマスを放ちながら考える。

バター焼き…あ、フライにしよう。

山菜もあるから天ぷらにして。

うんうん、そうしよう。

じゃあ、次も釣ろう。

俺は、再びタックルを構えサイドハンドキャストする。

ポシャっと小さな音を立ててルアーが沈む。

俺は、そうして釣りを続けた。



その頃、ミネルヴァはと言うと…森の中で熊と戦っていた。


「Arcus《アルクス》・Mitis《ミーティス》・Ventus《ウェントス》」


ミネルヴァは、左手を突き出し半身になりながら右手を右胸の前に構える。

そして、そのまま詠唱を続ける。


「Sagitta《サギッタ》・Decem《デケム》・Ventus《ウェントス》」


彼女の周りに、風の矢が10個浮かび上がる。

そして、熊に向かって走り出した。

熊は、大きく右腕を構える。

勢いよく振り下ろそうとしている。

熊までの距離は、おおよそ3m。

ミネルヴァが、距離を詰めていくとウォォォォォと雄たけびを上げる。

距離が、1mまで詰められた時だった。


「Emit《エミット》!!」


ミネルヴァが、叫ぶと風の矢が熊に殺到した。

彼女は、放った瞬間に後ろへ飛び退いた。

それと共に、大きな音と衝撃が響き渡った。



大きな音が響き渡った。

折角釣りをしていたのに、ばれた(逃げられた)。

何の音だったんだろう。

まあ、釣果もまあまああるからいいけど。

「マヨイガワカサギ」が10匹と「マヨイガマス」が3匹。

充分な釣果だ。

ワカサギは、フライ…って全部フライだな。

よし、料理をしよう。

内臓を取り除いていく…あれ?魔石があるな。

固有種かと思ったけど、この魚も 魔物モンスターだったのかもしれない。

魔石は、マーレに全部あげようかな。


「マーレ」


キュッと変わった啼き声がして俺の足元にやって来る青色の毛玉。

俺は、掌の上に魔石を13個置いてマーレに渡した。

マーレは、一口で全部の魔石を食べてしまった。

ワカサギの魔石は、小石サイズ。

マスの魔石は、ワカサギの魔石の3倍くらいの大きさだった。

マーレの口からは、バリバリと音が鳴っている。

スナック菓子でも食べるかのような手軽さでマーレは食べている。

俺の中で仮説が浮かぶ。

この世界の動物は、全て魔石を持っているのかもしれない。

動物は全て 魔物モンスターなのかもしれないな。

さて、小麦粉を用意しよう。

ワカサギと山菜に小麦粉をまぶす。

小型のダッチオーブン…どちらかと言うとクッカーにオリーブオイルを中程度満たす。

火にかけておく。

マスは、3枚に下ろし半身を4つに切り分けていく。

塩コショウをまぶして、小麦粉を全体にまぶす。

卵液にくぐらせて、パン粉を付ける。

オリーブオイルもしっかり高温になったようだ。

さあ、揚げていこう。

あ、その前にバッドを用意しておかなきゃな。

まずは、山菜から揚げていこう。

ジュっと音を立てながらオリーブオイルの海に沈む山菜。

少しすると浮かんでくる。

表面がキツネ色になったのを確認するとバッドに上げる。

次は、ワカサギだ。

ジュっと音を立てながらオリーブオイルの海にワカサギは潜水する。

やがて、息継ぎをするように浮いてくる。

そして、バッドに上げて休ませておく。

あとは、マスだ。

ジュジュジュっと音を鳴らせながらオリーブオイルの海に沈んでいく。

さっきよりも面積が大きいからかなかなか浮かんでくることはなかった。

倍ほどの時間が経ち、浮かんでくるとこんがりキツネ色に衣の色が変わっていた。

バッドに移し、休ませておく。

あとは、タルタルソースでも作っておこうかな。

玉ねぎのみじん切りは冷凍庫にフリーザーバック保存してある。

ゆで卵が必要だから別のダッチオーブンに水を張って多めに作っておこう。


「おーい、シンスケ」


遠くの方からミネルヴァの声が聞こえる。

俺は、声の方へ視線を向ける。

彼女は、何か大きな毛皮を引き摺っている。


「ミネルヴァ、それなに?」


俺は、ミネルヴァに近付きながら大きな声を出して尋ねる。


「えっと、『マヨイガベアー』って言う熊よ」

「倒したの?」

「うん、魔法で頑張ったの」


魔法凄いな。

俺は、「アカシック」を取り出す。

確かに、『マヨイガベアー』のページが追加されている。

しっかり、ミネルヴァの戦闘シーンが動画として上がっている。

動画でもいいんだ。

それとは別に『フォレストベアー』のページもあった。


「ねえ、ミネルヴァ。フォレストベアーとマヨイガベアーといるみたいなんだけど」

「たぶん、こっちが固有種で。フォレストベアーが一般的な熊なのかもね」


それでも、倒してしまうミネルヴァが凄い。

熊か…鍋にすると美味しいけど臭みがなぁ。

あんまり、好きじゃないな。

猪とか鹿とかの方がジビエとしては好きかも。


「食べるの?」

「何か使えるかと思って…毛皮とかどうかな?なめしたら敷物とかにはなりそうだけど」

「うーん、どうだろう」

「じゃあ、魔石だけ取って湖に流そうかな」


ミネルヴァは、ナイフでマヨイガベアーの胸を割いて魔石を取り出す。

魔石は、かなり大きくて人の頭ほどの大きさがある。


「ねえ、ミネルヴァ。流すのは、後にしよっか。

一度、ポケットに入れておくよ」

「うん、いいけど…どうして?」

「なんか、嫌な予感がする」

「嫌な予感?うーん、直感って大事だよね」

「お風呂沸かしてあるから入ってきたら」

「うん、そうするね」


そうして、俺はマヨイガベアーをポケットに収納する。

ミネルヴァは、お風呂に入りに行った。

俺は、ゆで卵と玉ねぎのみじん切り、マヨネーズを使ってタルタルソースを作るのだった。


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