第8話 マヨイガの森の朝

俺は、ふと目を覚ます。

横には、まだミネルヴァが横になっている。

静かにベッドから這い出る。

そして、テントの外へと出る。

空がしらみ始めていた。

まだ、早朝と言える時間だろう。

焚き火台は、すっかり下火になっている。

俺は、仕舞っていたテーブルチェアを設置し直しバーベキューコンロも設置する。

そして、コンロに焚き火台の下火になった炭を移し改めて火を起こす。

クッカーに水を張り温める。

冷凍に入れてある椎茸と油揚げをクッカーに入れる。

ダシを入れて煮たせる。

あとは、味噌を入れるだけだからミネルヴァが起きてからでいいな。

味噌を入れちゃうと煮詰まりすぎて美味しくないからなぁ。

あとは、スキレットでオムレツを作っておこう。

ホント、野菜が欲しいな。

じゃがいもがあればスパニッシュオムレツが出来るのに。

ロールパンをアルミホイルで包むとバーベキューコンロの火の中に入れておく。

そうして、朝食を作っているとミネルヴァが起きてくる。


「おはよー、シンスケ」


右目を擦りながら彼女はやってきた。

左手にはバスケットを提げている。


「おはよう、ミネルヴァ。

朝ごはん食べる?」

「うん、食べるー」


どうやら、彼女は朝弱いようだ。

足取りがおぼつかなくて危ない。

俺は、すぐにミネルヴァに近付き肩を抱いて支える。


「ミネルヴァ、大丈夫?」

「えへへ、シンスケ。ありがとう、大好き」


あー、今日も大好き頂きました。

嬉しいけど心臓に悪いなぁ。

俺は、ミネルヴァをテーブルチェアに座らせる。

クッカーに味噌を入れ溶くと器に装った。

お皿に、オムレツとロールパンを載せる。

トマトケチャップは、欲しいかな。

出しておこう。


「お待たせ」

「ありがとう、シンスケ」


やっぱり、少しふにゃふにゃしている。

顔が緩みきっている気がする。

普段がキリッとしている美女なら、いまはぽわぽわと可愛い美少女と言えるくらいにギャップがある。


「ミネルヴァ、低血圧?」

「あはは、うーん。朝とっても弱い」

「まあ、慌てる旅でもないからゆっくりして行こう」

「うん、ありがとう。

このスープ美味しい。

とっても優しい味がするね」

「それは、味噌汁って言うんだよ。

野菜がもう少しあればいろんな料理が出来るんだけど…流石に手持ちにはなくてさ」

「野菜かぁ」


俺達は、それからご飯を食べ終え少しのんびりしてから朝の森を散策することにした。

テントやテーブルチェア、焚き火台などは全て『アカシック』のポケットに収納した。

ふにゃふにゃだったミネルヴァも今ではシャキッとしている。

どっちの彼女も可愛くて好きだな。

ふにゃふにゃなミネルヴァは、守ってあげたい可愛さがある。

普段の彼女は、天真爛漫で向日葵のようなイメージだ。


「ねぇ、シンスケ。聞いてる?」

「へ?」

「もう、ボーッとしてたら危ないよ。

仕方ないなぁ、もう一度言うね。

今日は、植物を中心に撮影してね」

「植物を中心?」

「うん、食べられる物が見つけられるかもしれないからね」

「なるほど...ミネルヴァもそれは知らないのか」

「うーん、と言うよりも忘れてる感じかなぁ。私の記憶も『アカシック』に依存してるのかも。ざっくりしたことは、覚えている…思い出してる?感じかなぁ」


徹底しているな。

確かに、全てを知ってるガイドがいたらそれに依存して写真なんて撮らないだろう。

でも、お互いが共通した知識を共有する方が旅は楽しい。


「あれ?昨日の兎は?」

「ふふ、『フォレストラビット』はシンスケがたまたま撮った写真に映り込んでいたのよ」

「うわ、まさか過ぎる」

「美味しい兎肉に辿り着けたんだからいいでしょ」

「まあ、確かに」


俺は、『アカシック』のポケットからいつもの一眼レフカメラとコンパクトデジカメを取り出した。

一眼レフカメラは、レンズをマクロにしておく。

標準レンズに接写リングでもいいんだがケラレが起こる可能性が高いから最初からマクロにして、風景はコンパクトデジカメで撮影と棲み分けをしておこう。


「よし、準備OK」

「はぁい、後で写真の撮り方教えてね」

「もちろんだよ、次のキャンプ地を見つけたらでどうかな?」

「うん、それでいいよ」


それから、俺達は歩き出す。

コンパクトデジカメで全体をパシャリ。

キノコを見つければ近付いてマクロ撮影。

被写体に接触するんじゃないか位の距離感になる。

片膝をついたり、寝っ転がったり傍から見たら行儀が悪いように映るかもしれない。

傍と言っても見てるのは、ミネルヴァとマーレだけだから恥ずかしくもなんともない。

それから、お昼頃まで俺は植物をメインに撮影をした。

ミネルヴァは、マーレのバスケットいっぱいに色んなキノコ、山菜、果物を詰めていた。

マーレはと言うと、彼女の肩に乗っている。

ただ、昨日とは違って拳大くらいの大きさに成長していた。

今日のマーレは、ピョンピョンと跳ねながら移動もしている。

不思議な生き物だ。


---------------------

8話レシピ

https://kakuyomu.jp/users/amkze/news/16817330666595783946


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る