第3話 マヨイガの森と知恵の神の眷属との出会い

俺は、息を潜めながらデジタル一眼レフを構えていた。

ファインダーの先には、雌雄の鹿が2頭の小鹿と共に草を食べている。

シャッターを切ると、カシっと音を鳴らす。

無事に、鹿の撮影に成功した。

ミラーレスデジタル一眼レフの為、気持ち音が小さい。

ミラーがあるとカシャっと大きい音が鳴る。

これは、ミラーの上下運動の所為である。

俺は、一息つきながら一眼レフを首に下げた。

『アカシック』を確認する。

『フォレストディア』と言う名前らしい。

普通の鹿ではないということだろうか。

そう言えば、この世界って魔物とかモンスターとかっているのかな?

いたとしたら俺は、戦えないぞ。


「あ!見つけた。貴方が、メーティスママの言ってたシンスケだよね?」


そんな声が、頭上から聞こえた。

声音は、若い女性の物だった。

それにしても、ママ?

俺は、視線を上に向ける。

そこには、金色の毛色の梟が枝に止まっていた。

梟は、俺の傍に降りてくる。


「シンスケじゃないの?」

「いや、シンスケだけど…君は?」

「私は、メーティス様の娘でミネルヴァと言います」

「娘?あれ?メーティス様は牡鹿だったけど…」

「あ、それはママの変化の姿の一つなの」


なるほど、あの姿は仮の姿なのか。

だから、雌鹿ではなく牡鹿だったのか。

でも、雌鹿でもよかった気が。


「シンスケのお助けに来たからよろしくね。よっと」


ミネルヴァは、くるっと一回転すると姿が一変する。

そこにいたのは髪の長い金髪の女性だった。

動きやすそうなパンツスタイルで、白いブラウスにベストを着ている。

歳のほどは、20代前半と言えるほどだろうか。

キリっとした眉毛に切れ長な目。

綺麗で瑞々しい唇。

美女と言えるそんな女性だった。


「じゃあ、よろしく。シンスケ」

「う、うん。よろしく。ミネルヴァ」


女性と話すのは久し振りだ。

いや、仕事では話すがプライベートではだ。


「うふふ、どうしたのシンスケ顔赤いよ」


ミネルヴァは、ニヤニヤと俺の顔を見ている。

心臓が早鐘を打つ。

いやいや、35にもなって俺はなんでこんなにドキドキしてるんだろう。

おっさんなのになさけないだろう。


「シンスケ、年相応にウブなのね」

「年相応って、俺は35だぞ」

「あら?じゃあ『界』を越えた影響じゃない?」


ミネルヴァは、コンパクトミラーを俺に向ける。

そこには、20代前半の男性が映っていた。

黒髪の短髪の男性…俺だな。


「確かに、若返っている」

「シンスケの年に近い私が来たんだから違うと言われても困るわ」

「ミネルヴァは、年相応なのか…」


俺は、ポラロイドカメラを取り出しミネルヴァを撮影する。

カシュ、ジーと音が鳴りポラロイドが排出される。


「あ、それがママの言ってた写真なのね。どんな感じになるの?」


ポラロイドに画像が浮かび上がってくる。

そこには、ミネルヴァの姿が浮かび上がっていた。


「わぁ、凄い。絵とまた違っていいわね」

「ふふ、喜んでくれて嬉しいよ。これは、ミネルヴァにあげるね」

「ありがとう、シンスケ」


俺は、彼女に写真を手渡した。

これが、俺とミネルヴァとの出会いだった。

彼女との付き合いは、これから長く続いていくことになる。

…はずだ。



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