第173話 ひまわり畑〜王都へ
「ようし。じゃあ王都ハヤブサールまでダッシュするか!?」
「ダ、ダッシュ!?」
セシルは驚きカブは薄く笑っていた。
「ずっとこんな道なら6〜70キロで走れると思うんだ。それなら2時間半で王都に着くぞ」
「た、たしかに!」
ビビり気味なセシルに対してカブはやる気充分だ。
最高速という言葉で思い出した。
「いやー、思い出すぜー。新4号バイパスをフルスロットルで走ったのを!トラックや車にめっちゃ煽られてなー」
「え!?煽られたんですか??全開で走ったら僕でも90キロは出ますよ?」
「おう、だがそのバイパスは周りの車が100キロで流れてやがってな」
「い、一般道で?」
「一般道だ……」
「やばいですねそこ」
「ふふっ、だがここはどうだ?」
俺はニヤニヤしながらカブに話した。
「車やトラックもいない。パトカーも白バイもいない。信号すらもない。何も考えずにただ真っ直ぐ走り続ける……」
カブも俺と同じような笑顔を見せている。
「控えめに言いまして………………最高!」
「そう、最高だ………………行くぜーーーー!!」
――ドゥルルルルルッ!!カラガラガラッ!!
そこから俺はカブ90の3速で目一杯アクセルを回した。
「!!カイト。は、速い……!」
「セシルさん、カイトさんのカブ90について行きますよ!安心して下さい、スピード出てた方が二輪車は安定します!」
「そ、そうだけど……!」
「それに、もし事故りそうになったら僕が身体を張って回避しますから安心して運転して下さい!!」
「分かった、確かに早く走ってる方がかえって安全かもね」
少し不安が残りつつもカブに励まされてセシルはついて来た。カブやるやん。
ヤマッハから1時間ぐらいは本当に真っ直ぐな道で、俺達はアクセルを緩める事なく走ることが出来た。
――ドッドッドッドッ……。
途中で、道の向こうにサガーの大型車が見えて俺達は初めて速度を落とした。
高速で走ってると目立つからな。
――ガチャッ。ブゥウウウン……。
ギアを2速まで落とし15キロぐらいでノロノロとすれ違う。
――ゴウンゴウンゴウン……。
「まるで現代のトラックだな……」
「でかいー!」
ターニャはその大型車に手を振っていた。
サガーの運転手は「何だあの車は!?」といった感じでこちらを振り返っている。
こちらが手を振るとあっちも振り返してきた。
ヤエーみたいでなんか嬉しいじゃねーか。
「ばいばーい!」
俺達の荷車とは、そこそこ道幅に余裕がある状態ですれ違う事ができた。
きっと大型車同士がすれ違えるような車幅にしてあるんだろう。
――ドゥルルルルッ!!
それから俺達は再び速度を上げていく。
しばらくすると今度はキャットの大型車と鉢合わせした。
俺とセシルはさっきと同じように減速してすれ違った。
―― ゴウンゴウンゴウン……。
「いやー、しかし皆さんホントにデカいですねー、カイトさん」
カブが並走して話しかけてきた。
「ああ、でもあのデカさじゃこの道しか走れねーわな」
セシルも同意する。
「そうだね。キャットもサガーも車の開発会社と提携して新車の開発に
「多分100年ぐらい出来ませんよ!僕もそれぐらい、いや、もっとかかりましたもん」
「ははははっ。まずはガソリンエンジンの実用化からだな。あと電気!バッテリーは必須だ」
そう言えば……この世界には電気というものがあるんだろうか?後でセシルに聞いてみよう。
そのまましばらく進むと、道の両側に一面のヒマワリ畑が現れた!
「うおおおおおおーーっ!!」
「わああーーっすごいー!!」
――キキッーー……!
興奮してカブを止める。
しばらく俺はその景色のあまりの美しさに圧倒されて立ち尽くしていた。
俺は本来、景色とかに感動するタイプじゃない。むしろバイクでそこに行くまでがメインで、目的地はおまけだ。観光名所を眺めても「ふーん」で終わる。
だが、そんな俺でもこの景色だけは違った。
延々と続く黄色を眺めて口をポッカリ開けて、「すげぇ……」と
それを聞いたセシルが言った。
「カイトでもこういうの見て感動するんだね」
俺は開き直って答えた。
「ふっ……。一応俺も人間だからな。だけど相当レアだぞ」
「おじー!セシルー!きてー」
ひまわり畑からターニャが手を振っている
「おーう」
セシルもついて来た。
「これ!この花!」
ターニャが指差したのはひまわりの花だった。
「うん、綺麗だよなー花」
俺はターニャに同調したつもりだったが、ターニャの目には違うものが見えていたようだ。
「これ、お店でうってた!たぶん食べれる!!みんなでたべよー?」
俺は呆れた。
「お前食う事しか考えてねーじゃねーか!?」
「うふふー。ごはん大好き」
純粋な笑顔でそう話すターニャだが、ここって畑だろ?
「何しとるんね?」
うおおおっ!!??
なんか後ろにおばあちゃんが立っていた!い、いつの間に……。
俺も、おそらくセシルも「泥棒だと思われたら嫌だ」と気まずくなっていた。
「い、いやー。あんまりにも綺麗で立派な畑だったからつい入っちまって……すまねえ」
「ごめんなさい……」
セシルも頭を下げた。
「おほー、ええてええて。コイツの種食うてみるか?」
「うひゅっ!?」
ターニャが目を見開き奇妙な声を上げる。
「え!?い、いいのか、おばあちゃん!?」
「こんだけあるんや。花ごと一個持って帰り。あ、枯れた花やで」
「ありがとうおばちゃん!」
「どうもありがとうございます」
「たねくれてありがとー!!」
俺達はお礼を言って枯れたひまわりの花を丸ごと一つもらった。
サンキュー農家のおばあちゃん!
なんか、こういうのも旅の醍醐味かもしれんなぁ。
もらったひまわりの種をターニャは即食おうとしていたが、家に帰ってから食おうと提案した。炒めたり味付けも出来るだろうし。
「……むー、分かったー家でたべる」
と何とか納得したようだ。
「あ、お帰りなさいカイトさん達!」
カブが笑顔で出迎える。
「おう、農家のおばちゃんにいいモン貰っちまったわ」
カブに枯れたひまわりの花を見せると、面白いアイディアを出してきた。
「その種を絞った油からエンジンオイルとか作れたら面白いんですけどねー」
「うむ、面白い案だが取り敢えずこの種は俺達……特にターニャの胃袋に収まる予定だ」
「なるほど、流石ですターニャちゃん」
などとしょうもない話をしながら再びカブを走らせた。
――そしてついに、俺達は王都ハヤブサールを丘の上から見下ろせる位置まで来たのだった!
「うおおおー!ヤマッハの3倍ぐらい広くねーか!?」
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