武器は己の拳のみ

目が覚めた。

今日はちゃんと朝に目覚めることができた。

目覚めた、ということは、生きてる。

そういえば、今日は土曜日だったっけ。

丁度いい。思う存分ドッペルゲンガーと戦える。


ご飯食べて、着替えて、顔洗って。

家を飛び出し、昨日ドッペルゲンガーと相対した場所へ。

やはりその場所にドッペルゲンガーがいた。

ドッペルゲンガーを視認すると同時、私はドッペルゲンガーに殴りかかっていた。

早く殺してしまわないと。

拳は当たった。

確かに、当たったのだ。

なのに、ドッペルゲンガーはその薄っぺらい笑みを張り付けたままで、しかも無傷だった。

それを見て、私は余計イライラした。

なんなの、こいつ。

そのイライラをぶつけるように、何回も何回も殴り続けた。

見た目は自分そっくりなのに、よくこんなにも平気で殴れるな、とも思ったが、イライラには勝てなかった。


もう一生分人を殴っただろうと思ったところでやめた。

嘘。体力の限界を感じたから。

どれだけ殴ったか数えてはいなかったけど、とにかく沢山殴った。

なのにドッペルゲンガーは相変わらず無傷。

本当に、イライラするったらない。


とりあえず、家に帰って作戦を練る。

どれだけ殴っても傷一つつかないドッペルゲンガー。

包丁を持って行っても、誰かに見られたら人生が終わる。

そこで思いついた新しい方法。

あれを自分の第二人格としよう!

とても現実的ではないと思うだろう?

ドッペルゲンガーが存在している時点で既に現実とはかけ離れているのだよ!!

…取り乱した。ドッペルゲンガーのせいで、頭までおかしくなったのかな。

でも、第二人格の話は本気。だって、そうするしかなくない?

敵として相手できないのなら、味方に回すしかないんだよ。


私の名前は木陰こかげらむ。貴女の名前は?

と、ドッペルゲンガーに問いかける。ドッペルゲンガーは答えない。

クソ野郎…と思ったが、声に出したら余計味方にはなれない。

…もしかしたら、言葉がわからない?

殴れたということは、物理判定はある…。

私は、ドッペルゲンガーの手を掴み、家まで連れ帰った。

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Another Me あみゅー @amyu_singer_gamer

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