07.空虚都市セカンダイルⅡ<アウェイク・赤>
かおをぺたぺたとさわる。
へんなかおをしてみる。
べーとしたをだしてみる。
これはだれかじゃなくて、あたしだ!
(うぃぐな、これどうなってるの!)
『これこそが<ミニマム>の効果だと昨日伝えたはずだ』
(でもね、でもね。こんなにちいさくなるなんて、やりすぎでしょ!)
『そう子供のように憤るな。おっと、今まさにそのお子様であったな』
うぃぐなはくくくとわらう。
(むっきー! あとでおぼえてなさいよ!)
あたしは、どんどんとじだんだをふんだ。
『まあ落ち着け。これは一見変り種ではあるが、場面によっては何かしらの役に立つのだ』
(そんなことより。はやくみつけないと、まちあわせにまにあわないよ~)
そしてあたしはきづいた。
そのまえに、かいるさんに、このすがたであうのはちょっとまずい!
(ね、これいつもどるの?)
『明確な時間は不明。そのうち直るであろう。ともかく、この状態で銃弾を探す他ないな』
(もー、わかったよー!)
そんなわけで、たまのそうさくをかいし。
このからだは、してんがひくすぎるし、ぜんぜんまえにすすまない。
おまけに、うぃぐなもおもたい。
あたしはこどものきもちを、ひさしぶりにつうかんしてる。
『この方角でいいようだ。引き続き捜索を続けてくれ。おい、もっと急げよ』
むせきにんなこえに、むかむかしてきた。
いやいやしたがってると、れつになってあるく、ありさんがめにはいった。
『おい、何をしている』
『アリスよ、聞いているのか?』
『いい子だ。返事をしてくれないか』
かんぜんむしをきめこむ。
ありさんをおってるうちに、せまいばしょをくぐったりしてたら、さいしょのいちから、かなりすすんでるのにきづいた。
『む、ここだ』
(みつかった?)
『アリスの手柄だな。偉いぞ、よくやった』
(えっへん! じゃあ、ここにうぃぐなをおくね!)
わかればよろしいのよ。
あとは、きのうとおなじようなてんかいになった。
『――これが<アウェイク>だ』
(あうぇいくってなーに?)
『一時的に身体能力を引き上げるものだ。これがあれば、屈強な男にすら太刀打ちできるだろう』
(それすごい!)
『これで二つ目か。思いのほか順調だな』
(あたしのおかげだねー)
『ああ、そうだな』
よろこんでいると、めのまえがくらくらして、あたしは元の姿に戻っていた。
『ようやくのご帰還か。アリスはかなりわがままな子供だったようだな』
(そんなことはありません!)
『して、童心に帰った感想はどうだ?』
(あんまりいいものじゃないよ。とにかく動きにくいし、おまけに誰かさんが命令ばっかりするしね?)
『まあそう言うな、この先も長い付き合いとなるのだぞ。ある程度は諦めてくれ』
(そこはあたしの諦め前提なのね……)
ウィグナーの楽しげな笑い声が響く。
(ところで、どうしてあたしに力を貸してくれたの?)
『退屈だったからだ』
(え、理由ってそれだけ? じゃあ誰でもよかったってことかぁ)
『いや……
もし、あの時聞こえていなかったらと考えるとぞっとする。
息を切らせ集合場所に向かっていると、カイルさんが手を振っているのが見えてあたしも小さく手をあげた。
「ごめんなさい、お待たせしてしまって!」
「いえいえ、僕も充実していましたのでまったく問題ありませんよ」
言葉どおりに彼は昨日よりもいい笑顔を浮かべている。
この様子だと、スケッチもうまくいっているだろうとわかる。
「そうですか? だったらいいんですけど――」
そう言った瞬間、ぐううううううぅと豪快にお腹の虫が鳴いた。
むしろ何かのモンスターの鳴き声だ。
あたしは火がついたように顔が熱くなるのを感じると、恥ずかしさから俯く。
(ちょっとウィグナー! これ、絶対ミニマム関係あるでしょ!?)
『この件について
(あっ、逃げた……!)
ウィグナーに呪いの言葉を送っていると、唐突にカイルさんは何度か咳払いをした。
「では帰りましょうか。そうそう、次の町ですがいいお店がありまして。きっと満足いただけるはずです。実を言いますと店主とは懇意にしていて――」
「わあ、それは楽しみですね……」
気を遣ってくれているのかもしれない。普段以上に口数の多い彼に、あたしは気の抜けた相槌しか打てなかった。
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