あるほしの話

輝空歩

あるほしの話。

二年後の話、十九才頃の一人の男と一人の女がネオンライトに照らされながら、

夜の街を歩いていた。


街は俗に言う繁華街のようだ。

赤と黄色の看板・石のようなビルが空の暗さから人々を切り離し、その下を数々の人間が歩いていた。法を守もっている者も守っていない者も、同じくしてその場を歩いているのだ。。


その横を赤と黒の自動車が抜けていく。前照灯が二人の男女の顔の縁を照らした。

女は表情をうかべていなかった。男の方は、何かを決断しようとしているようだった。我は彼が何を考えているのかも、彼女が何を考えているのかも知らない。ただこの瞬間にこの先の青春人生の大きさ転換点を二人が迎えているということを直感に感じていた。   その時、空に穴が空いた。

穴と言っても、ただの穴ではなかった。地球上で見たことない色をしていて、屋根のように空に空いている。その縁から未知の色が外へと滲み出ている。


そんなうちに穴から赤に近い色をした物体が出てきた。まるでそれは、イメージ図でみる脳の細胞のようなものだった。ゆっくりと空間へと入り込み、そこから侵食するように、地面や空に浮かぶ様々なものへとまるで何かを探すように伸びていった。


不思議な重圧感が繁華街の皆を覆う。


次第に、細胞擬きが地面へと近づいてゆき、ついに3階建てのビルに接触した。


ビルが倒壊する。ビルの破片が雨のように飛ぶ。

その破片も消える。


街が、消えた。



ーーーーー



一人の神が、空間に映るその映像を見ていた。その神がゆっくりと頭を横にやると、そこにはもう少し年上な神が立っていた。


二人はきっと師弟か 上司と部下か または人間の世界には無い関係性なのだろう。

「結果は?」年上の神が静かに尋ねた。


「調査結果は予想通りですね。ただ調査が与える下世界への影響は大きく軽減されました。」


「絶滅の心配はないのか。それはよかった。前任の悲劇を繰り返したくはないからな」


「えぇ。あの時は大変でしたねぇ。天世界で餓死神が出たとか。数百年に一度の大悲劇でしたよ」


「ちなみに数ヶ月後のHSP種減少計画は順調か?」


「はい、もちろんです!それにしてもたった一種が故意的に絶滅を起こすだなんて、下界も末期ですね。」


「そうだな。本当にお前の功績は素晴らしい。そうだ、これから全能に会いに行くのだがお前も行くか?」


「行ってみます!」

二人の神は去っていった。


空間に残ったスクリーンには、少し青と緑と黄色の混じった青色の星が、見窄らしく写っていた。


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