第10話 レッスン開始

ここからちょっとおピンク色になります。




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11月10日


先日、体を触り合ってからずっと引っかかってる感じがある。記憶というか感情というか。なんか胸につっかえてる。

なんだか朧げに、こう、早く一つになりたい欲求があるんだ。胸の奥の方、深いところで燻ってる。俺は答えを急いで焦っているのか?えっちをすれば答えが出るとでも思ってるんだろうか?

雨の日が特にひどい、急がないともう2度と繋がれない、そんな気持ちになる。……雨の日はみんなナイーブになるというから、俺もそうなんだろうか。

まだ答えを出していないのに、ルシオの身体を欲するのは順番が違うんじゃないかとも思う。「抱きたい」と言われてその気になって、そうしなきゃいけない気持ちになっていないかと何度も自分に問いかけたけど、ルシオと肌が触れる度、視線が絡む度、もっと深く交わりたいという感情が溢れてしまう。

今日の宿で北京を出て二つ目。ルシオの食事にした。その時に、もう黙っているのが辛くて、隠し通す自信がなくて、順番が間違っているのは本当に申し訳ないが俺はどうしてもルシオに抱かれたいと伝えた。

ルシオは、あいつは優しいから。

しばらく考えてから俺を抱きしめて、俺の髪を撫でながら「すぐには抱いてあげられない」と言った。

そりゃそうだ。


ごめん。


嫌いにならないで。


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11月10日


あまりにも僕に都合が良くて、夢でも見ているのかと思った。


ホテルに部屋を取ってリヤンの食事を摂ったあと、僕の食事をさせてもらったらリヤンから「ルシオに抱かれたい」と乞われた。

冗談でそういうことを言わないで欲しいと言ってあるし、先日身体を触りあったし、なにより、その目が。

リヤンのあの無邪気な好奇心からじゃない。

切なげで、悩ましくて、たまらない温度と湿度を持った視線を向けられて、危うく理性が粉々になるところだった。


男同士のそういった行為について少しは調べていてよかった。

リーゼロッテの生まれ変わりがリヤンだとわかってから、僕は男を抱けるのか?と不安になってそういった雑誌のHOWTOを読んだことがある。

どこをどう使うのかを知ってから服越しに彼の小さなヒップを眺めて、僕の食事の度に腕の中で震える細い身体(でも僕より背が高い) を堪能して、今では“イケる”と確信してる。


けれど、まあ一応僕も持っている器官だし想像するにいきなり踏み込んではいけないんじゃないか。

これは僕の希望論だけど、彼はあまり経験が多くなさそうに思うから、ゆっくり時間をかけて挑んだ方がいいんじゃないか?

……というのは建前で、今日このままでは僕は絶対に紳士的に振る舞えないから、すぐにはできないと伝えた。

リヤンが少ししゅんとした顔をしていて、胸が痛かった。けれどそれより他のところが痛いくらいで、本当に、本当にギリギリだった。

なんとか、まだ、紳士でいられた。……と、思う。


リヤンのスマートフォンは確か調べ物も出来たし、調べ物の結果を映像で見たりも出来るんじゃなかったか?

明日リヤンの夕食を終えたら、提案してみよう。

一緒に勉強して、レッスンしていけたらいい。


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11月11日


今日は電車の都合でここにもう一泊する予定だったので、昼間は近場の商店街を歩いた。

ルシオが起きる頃に帰って、テイクアウトした食事を食べ風呂を済ませて、さぁ寝るかとベッドに腰掛けたあたりでルシオがやってきた。側に跪いて俺の両手を握り「リヤン、隣に腰掛けてもいいかな?」なんて改まって言ってきた。何事だと思いながらも承諾すると恭しく指先に口付けを落としてから隣に掛けて、俺の方を向いて「昨日は君の気持ちを無下にして済まなかった」「今日は提案があるんだ」と言いながら俺の頬に柔らかいキスを何度も落とした。何の提案かと訊ねるとルシオはじっと俺の瞳を見つめながら、男性との経験はないから男同士のハウトゥーセックスを一緒に学んで、トレーニングを重ねて、それから抱き合おうと言った。

てっきり昨日の「抱けない」は、返答も貰ってないのにセックスだけ欲しがられても対応できないぞ。という意味なのだと思っていたから驚いてポカンとしてしまった。

そんな俺の顔を見てか、一度待たせたから気乗りしないのならば無理強いはしないなんて言われて、慌ててスマホを取り出した。そんな訳あるか、そんな訳……。

ベッドで、肩くっつけて、小さいスマホの画面を一緒に覗き込みながら読んだよ男同士のハウトゥーセックスを。文字も動画も。たぁっぷり1時間は見た。

必要な物がいくつかある事がわかった。綺麗にするヤツと潤滑油と、コンドーム。

今手元にはないから、トレーニングをするなら明日以降に。という話で落ち着いた。

話は。話は落ち着いた。

1時間もセックスの事を2人で考えてたんだ。多少はムラムラする。でも、昨日の今日だったし、言い出せなかった。

あと、俺、やっぱり頭のどこかで「リーゼロッテ“の”ルシオ」だと思ってる。ルシオが欲しいと望んでいるけど、頭のどこかでいつもリーゼロッテがちらつく。いざルシオに触ろうと思うと、なんだか申し訳ない気持、ルシオはリーゼロッテとは寝たんだろうか。

いや、フィアンセだって言ってるんだ、当然ヤってるだろうよ。そりゃそうだろ、そりゃ、あたりま、

なんか、むかむかしてきた。


あれ?なんだこの気持ち。

もしかして妬いてるのか?過去の自分に?


とりあえず、明日の日中に薬局に行くことにする。







俺だって、心の底からルシオは俺のものだって、わがままをだな(二重線で消されている)


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11月12日


リヤンが潤滑油を買ってきたと言っていたけれど、袋から出されたのは化粧用のオリーブオイルだった。

あれ?映像で見たやつは、もっとどろっとした何かだった気がする。と思ったけど、まあ油には変わりないし、なにより、リヤンがそんなに、昨日の今日で油を買ってくるくらい僕を求めてくれているんだと思ったらそんな疑問も吹き飛んだ。


シャワーを浴びて、ベッドでバスローブを脱がせて抱き締めてキスをして、いよいよだ!と思って手に垂らして触れてみたけど、狭くってダメだった。リヤン自身の緊張で固くなってしまっているのと、どうも油の粘度が足りないようだった。

驚いて笑ってしまった。ははあ、映像で見た潤滑油がやけにどろっとしているなと思ったら、そういうことか。あの方が便利なんだろう。

なんだか泣きそうな、申し訳なさそうなリヤンに笑いかけてたくさんキスをして、「じゃあ今日は、ベッドで緊張しないようにレッスンしようね」って囁いて身体中撫でて擽ってキスをした。

せっかくだから、と思って油を手に取ってリヤンの熱くて息づいてるものに触れた。

リヤンの熱で油が温まって、オリーブオイルの香りがするのが、なんとも。

カプレーゼとか、カルパッチョみたいな……そう、前菜だ。前菜。

メインディッシュまでまだ時間がかかりそうだけど、僕の腕の中で細い身体が強張って、張り詰めて震えて、勤めを果たして弛緩するまでを堪能できるのがたまらない。


……舐めたら怒るかな。


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11月15日


昨日の夜、シャワーを浴びるときに1人でトレーニングをしたら、息継ぎの拍子に不意にするんと指が入った。なんだ、入るんじゃんって嬉しくなったのでルシオの様子をうかがってトレーニングがしたいと言ったら快諾してくれて三日ぶりに2人でトレーニングすることになった。

前回は俺が買ってきた油(いい歳こいてローション買うのが恥ずかしくて薬用オリーブオイルにした)の粘度が足りずにすぐに油切れを起こしていたとルシオに聞いて、連れ立って夜の薬局に寄って専用のローションを買った。心なしか店員の目が冷ややかだった気がするのは、俺の心がそう見せているだけだと思いたい。

宿に戻ってシャワーを浴びて、ルシオをベッドに仰向けに寝かして、ルシオの腰のあたりに跨ってガウンを脱ぎながら1人で練習したときに指が入ったから今日はうまくいくと思う、と告げるとルシオは眉をひそめて、1人で頑張ってくれたのはすごく嬉しいけれど、これからの俺の“初めて”には全て立ち会いたいから独り占めしないで欲しいと、俺の指先にキスしながら言った。

脱ぎかけだったガウンを脱いで、ルシオの手を引っ張って、誰かが俺ン中に入ってくるのはお前が初めてだって言ったら、ひどくうっとりした顔をしたのでなんだか恥ずかしくなって俯いてしまった。

引き寄せた手が俺の尻を撫でて、反対の手が腹のあたりを行ったり来たりしてあちこち擽った。そのうちガチガチに勃起してしまって、息も上がって、なにがなんだか訳がわからなくなった頃にルシオがローションを手にとって穴を指先で撫でた。息、呼吸だ、整えないとと思って両腕をベッドに突いて、少し腰を浮かして、ゆっくり呼吸をしたらルシオの指が俺の中に入ってきた。

ぬるぬるした感触と異物感と、ルシオが入ってきたんだって感情でいっぱいいっぱいだった。

ルシオが中をゆっくり撫でながらちんちんも撫でてくれたので、あっという間に射精してしまった。

ルシオの手にたっぷり溢れた。

ルシオが俺の中を撫でながら舐めていいかと訊いてきたので、何を舐めるのかわからないままに良いよと言ったら手についた俺の精液を舐めた。フルーティだとかなんとか言ったので、マジか、精液ってフルーティなのかって思ってルシオの手を掴んで俺も舐めてみた。

冷静になった今ならわかる。んな訳あるか。

苦かった。


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11月15日


神よ!!!!

いや待って、神とかどうでもいい、そんなものは知らない。ああ、ああ!なんてことだ!!

リヤンが処女だ!!


疑っていた訳じゃない、と言ったら嘘になる。疑っていたさ、きっとどこかの男と経験があるんだろうなって。

だって、酷く酔っ払って僕の身体を見分している時、乳首を舐めて「味はふつう」って言っていたもの。

普通なんて言うってことは、他の何かと比較してるってことだ。現に僕はリヤン以外の男の乳首なんて舐めたことがないから普通かどうかなんて知らない。

それがどうだ。今夜僕の上に跨ったリヤンが言うには、彼の中に入るのは他に誰もいない。

僕!!僕が初めてだ!!


初雪を踏み締める気持ちで、彼の体内に踏み込んだ。

指だけ、指だけだ。けれど確かな一歩。

月に降り立ったという人間と今の僕と、高揚感においてどちらが上だろう。

しかも、僕の腰に跨って、足を開いてあられもないところを見せつけながら、「昨日一人で練習した」とまで!

ああ、彼が僕と繋がりたくて一人で練習まで……けれど、彼が一人で、彼の指で初めて踏み入ったというのがいただけない。

僕も立ち会いたい。僕が奪いたい。

そう思いながら、彼の中に触れた。

熱くて湿っていて、女と似ているけど違う。リヤンの感触。

僕は経験が無いから、痛いとか、嫌悪感とかがあったらどうしようと思ってゆっくりと中に触れながら彼の身体の前のものにも触れてみたら、ちゃんと立ち上がっていた。

可愛い。もう、男と寝られるかと気にしていた僕は何世紀か昔に置いてきたようだ。

だって、気持ちいいかどうか、興奮しているかどうかが文字通り手に取るように(それどころか実際に手に取って) わかるんだもの。愛おしくない筈がない。


彼の、リヤンの中も、股座から飛び出した部分も、血潮と同じ熱さだった。当然だ、生きているんだから。

右手に感じる身体の内側の感触と、左手で指を絡ませたものの感触、それに僕の上で身体を伏せたリヤンの息遣いと、表情と、汗ばんだ肌の匂いと、それから、それから。ああ、指に絡んだ蜜の味も!舐めていいか訊いたらいいよと言ってくれた!嬉しい!

ああ、ああ!全部味わい尽くすには身ひとつじゃ足りない!!しかもあの身体全部、これからの初めては全部僕のものだ!

いや、これはまだレッスンだから、これからもっと、え、もっと?今日よりもっと凄いことをするのか?

え?僕、大丈夫かな!?心臓が破裂でもして死ぬんじゃないか!!?

死にたくない!!死ぬ前にリヤンともっといやらしいことをしたい!!


リヤンのかわいい雄蕊を愛でて埒を明けさせたあと、僕のものも慰めてくれた。

リヤンのお尻の間に挟む、なんていやらしいやり方で。

ほんっとうに、なんていやらしい子だろう!

……指が入ったんだから、押し入ってやろうかと思ったのは何とか口にも行動にも出さずに済んだ。

まだだ。その時は、きちんとキメたい。ちゃんとした区切りにしたい。

僕、耐えられるかな!気を強く持つ!


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11月23日


食後、宿に帰る前に大通りを少し散策した際ハイソで美人な女の人が目に入ったから、俺みたいな身分の低い男なんかよりああいうハイソで身綺麗であろう美人な女の方がつり合うと思う、なんて思ったまんまのことを言った。

みるみるルシオの表情が凍って、手首を掴まれた。

何も言わなくなったルシオがぐいぐい俺を引っ張って宿に入り、シャワーも浴びさせてくれず、ベッドに引き摺り込まれた。

ずっと何も言わないから、怒ったのか、悪かった。って俺に覆い被さったルシオに恐る恐る言ったけど、あいつは首を左右に振って、真正面から俺の顔を覗き込んだ。肉食の獣に睨まれた小さい動物の様な気持ちだった。

勿体ぶったキスを何度も、身体中に、何時間もされた。

合間にこぼされる言葉は全部“ルシオにとって俺がどれだけ大切で魅力的か”という言葉だけで、気が狂いそう(気恥ずかしくて)だった。

身体全部にキスもされたし指先でくすぐられたし、すごい勃っちゃったのにルシオは肝心のところには一切触ってくれなくて、どんなにお願いして、強請ってもくれなくて。しまいにゃ涙が溢れてきちゃって、もう訳わかんなくなった。ずっとなんか口走ってたけど、何を言ったか覚えてない。

暫くして漸くルシオがちんちんとケツを触ってくれたけど、敏感になりすぎてて、身体が過剰に反応してしまって失禁した。


最低だ。


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吸血鬼の手記より


12月7日


最近気付いたんだけれど、どうやらリヤンは物凄く感じやすいみたいだ。

局部はもちろんだけど、特に背中。あと首筋かな、これは僕の食事の影響かもしれない。

何度か重ねたレッスンの手応えと、先日リヤンが僕に少し嫌なことを言ったために敢行したお仕置きの結果から鑑みるに、“とっても敏感ですぐ気持ちよくなっちゃうけど、経験の少なさから局部以外で気持ちよくなれることを知らない”って感じかな。教えてあげればすぐに気持ちよくなっちゃう。かわいくていやらしいうさぎさんだ。


あとは物凄く緊張してしまう癖がある。

お仕置き(とは言っても全身くまなくキスの雨を降らせて僕の気持ちを囁き続けただけだ。全部本心だし) の結果、リヤンのピンク色のかわいい槍を丁寧に撫でて擽って擦ってあげたら物凄い声を上げてお漏らしをしてしまって、あれがどうやらショックだったらしい。

あれから何度か挑んだけど、どうもお漏らしをしたくないが為におなかに力を入れてしまうらしく、その為に後ろの、……秘密の花園に踏み込むことができない。


これじゃレッスンにならないと思ったけど、まあ悲観することもない。

身体を繋げるのは、ひとつの区切りというか、記念になるところでしたい。そこに行くまでにはまだかなり日数がかかる。


それに、うすうす気付いてはいたけどはっきりと自覚した。

僕は、どうやらリヤンの体液全てに興奮するフシがある。

レッスン中に僕の手の中に溢れた白濁も、失くしたと思った指輪を見つけて安堵した時に目尻に浮かんでいた涙も、舌を絡めるキスをした時に溢れた涎も、真夏のバザールでアイスクリームを舐めながら首筋に伝っていた汗も。

お漏らしまで、嫌悪感どころかもっと見たいと思った。

……しかも、僕の手で感じて極まってのお漏らしだ。興奮しないはずがない。


明日からのレッスンは、気持ちよくなっちゃうのは恥ずかしくないんだよ、と教えることにする。

リヤンが気持ちよくなればなっただけ、僕は嬉しいから。

きっとその方が、いつか来る初めて繋がる日も痛くないんじゃないかな。その時は精一杯尽くすから、たくさん気持ちよくなって欲しい。


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12月16日


ルシオからレッスンをしようと言われると気が重い。

レッスンが嫌なんじゃない、漏らしたことを思い出して辛い。あれから2、3回レッスンをしたが毎度力んでしまって入ってたはずの指が入らなくなってしまった。

最近、触られると訳がわからなくなってしまう。指が触れる度、唇が重なる度、頭がぼーっとしてしまう。

この間なんてルシオを引っ掻いてしまった。

ルシオは怪我なんてしないから気にしないで欲しいと言ったが、そういう問題じゃない。


今日、レッスンを誘われたが断った。

断った際にルシオが「もしも先日のことを気にしているのならば、そんなこと気にしなくていいんだよ。君がそれだけ喜んでくれたって事は僕にとっての喜びなんだ」「気持ち良くなる事は恥ずかしい事じゃない、僕は君が気持ち良くなるように触れているんだからそれは当然なんだよ。むしろ、喜んでくれてすごく嬉しい、ありがとう」と、俺をきつく抱きしめて長々と囁いた。


どんな顔をしたらいいのか分からなかった。










断るんじゃなかった。


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12月17日


昨日とうとうレッスンを断られてしまった。

嫌になったかな、と不安になったけど、抱き締めて愛を囁いてキスをしたら仏頂面ではあったけど目が物欲しそうに潤んでいたから、やっぱりあのお漏らしが気になっているだけだろうな。

強情っぱりめ。


とりあえず、僕の食事を摂らせてもらって、ついでにお膝に抱いて背中を撫でて(擽るとリヤンは凄い声を上げるからかわいいけど、今日は我慢した)、リヤンが嫌がることは絶対にしない、という前置きをした上で、キスはしてもいい?と訊いた。

物凄い長考の末に、ちいーーーさく、頷いてくれた。

舌を入れるのは?と訊いたら、唸りながら困惑したような恨みがましいような目で睨まれたので、わかった、と頷いてバードキスだけもらった。


さて、この照れ屋で強情っぱりのうさぎさんのガードをどうやって崩していこうかな。


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12月23日


合言葉をメロンにした。

また粗相をしたらヤダけど、繋がりたい欲求が無くなったわけじゃない。

だからルシオから誘われて、恐々トレーニングに挑んだ。

触られている時に本当は嫌じゃなくても口から「ヤダ」が溢れてしまうから、本当に嫌な時に言う合言葉を決めた。それがメロン。好物を聞かれて、そう答えたからそれになった。

最中に本当に嫌な時には、俺がメロンと言えばルシオは必ずやめるという約束だ。

最近俺が不安がっているのを察してだろう、ルシオから提案された。気を使わせてしまった。でも、絶対にやめてくれるという安心感はある。

試しにおんなじ所をずっとくすぐってみようか、という話になり(ベッドで互いの体を触り合いながら相談していた)、ルシオは俺の乳首ばっかりくすぐり始めた。

最初はくすぐったいばかりだったけど、だんだんと頭がぼんやりしてきて、しまいには感じてしまって痛いくらいに勃起した。

嘘だろ、乳首で?って驚いたけど、舐めたり吸ったりされるうちにとうとう先走りが濁った。

……射精したんだ、ちんちん触られずに。

もう恥ずかしくって、たまらなくて、合言葉を言いかけたけど、いやまて、ルシオの恥ずかしいところも見てやればいいんじゃないかと思い至って、ルシオのちんちんを触らせて欲しいと強請った。

俺が寝っ転がって、その上にルシオが覆い被さって俺の顔を覗き込んでる。その顔を、前髪がはらはらと落ちた、妖しく綺麗なその顔が歪む所を見てやろうと思って、両手で前髪を掻き上げて、顔がよく見えるようにした。

俺の脚の間に割って入ったルシオの脚の付け根に触れて、熱くっておっきいそれを両手で掴んだ。暫くくすぐっていたんだけど、俺が腰振って?って言ったら次第にルシオが俺の両手に擦り付けるみたいな動きを始めて、まるでセックスするみたいな腰つきで気持ちよさそうにしてた。ほんのり汗ばんだルシオの首筋を舐めた。何度かキスをした。

くねるような、まったりとしたような、強くて重いピストンを両手で受けてるうちに、どんどんえっちな気持ちになった。

ルシオが出した後、ルシオから頬を舐められた。

よだれ、垂れてる。って舌なめずりをしたルシオが言った。また勃起してるね、って。そのままの姿勢で俺のちんちんを撫でてくれた。


結果、俺が恥ずかしいだけだった。



散々「ヤダ」は言ったけど、今日は合言葉は使わなかった。


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12月24日


列車で移動して、行きとは違うホテルに泊まっての帰路だから、時々今日が何日か忘れてしまう。

クリスマスじゃないか!クリスマス!

僕はキリスト教徒ではないから(そもそもそんな吸血鬼はいないと思う) 儀式的なものはよくわからないけれど、映画や何かで見る限りではクリスマスって恋人同士で贈り物をしあったりしっぽり甘い夜を過ごしたりするものなんじゃないのか?

いや待てよ、リヤンは元神父なんだ。そんな浮ついた過ごし方は許せないタチだったらどうしよう。

とりあえず、明日は少しいいディナーと、ワインかシャンパンを用意しよう。

あと、なにかプレゼントを用意しないと。


昨日レッスンを再開したけど、まあ毎回のことだが僕のかわいいうさぎさんは昨夜もかわいくていやらしくて、たまらなかった。

胸に実ったちいさな飾りを擽って舐めて、硬く熟れたところで牙の先で引っ掛けて弾いてやったらリヤンが果てた。

リヤン自身も驚いていたけど、僕も驚いた。やっぱり物凄く感じやすいみたいだ。

全身、どこもかしこも気持ちよくなれるようになったら素敵だと思って、もっとたっぷり気持ちよくなってもらおうと思っていたら、リヤンから僕のモノに触りたいと申し出があった。

断るわけがない!リヤンの手、指が長くて骨ばってて、器用に動く手。血が通ってて僕より体温が高い熱い手。その手が、指が、熱り立った僕のモノに絡んで撫でて擽って……夢みたいだった。

気持ちいいけど、決定的な刺激ではなくてもどかしい、でもすぐに終わるのは勿体ない、って逡巡していたら、「腰振って?」とリクエストが来た。

リヤンの手に擦り付けていたらあっという間に汁が溢れて、動く度に水音が鳴るのがまるで本当に繋がっているかのようで、たまらない。

指を入れた時のリヤンの中の感触を思い浮かべながら腰を使って、リヤンの手に擦り付けて貪っていたんだけど、ふと目を向けたリヤンの表情がなんというか。

頬を染めて、目が欲に潤んで、口元が少しだらしなく緩んでいて、酷く物欲しそうで。

そんなリヤンから首筋を舐められて、ぞくぞくと悪い痺れが背中を貫いて、気持ちよくて。

リヤンの手を汚した時にはすっかり息が上がってしまった。リヤンはうっとりした顔をしていて(ものすごくかわいい) 口の端から涎が垂れていたから、キスのついでにいただいた。


レッスンは順調。

あと2ヶ月くらいかな?


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