第8話 初めてのケンカ
吸血鬼の手記より。
10月1日
列車で移動。三時間くらいの移動だったからまたリヤンと少しカードゲームをした。
あのババ抜きとか言うゲーム、何回やっても勝てない。なんだ?必勝法でもあるのか?リヤンがずっと笑っていたからよしとする。
中国に向かおうと決めたから、またしばらく鈍行列車の旅だ。
日没後に宿を出て列車に乗って、二、三時間移動して、すぐに入れる宿を探して。
ガイドブックで見たら半日で着くと書かれていた距離に、何日も、下手すると何週間もかけて。
いらない苦労をかけているんじゃないかと思っていたけど、リヤンが楽しいと言ってくれた。僕も、目が覚めたらリヤンがいて、夜もリヤンの寝顔が見られて嬉しい。
……またキスがしたいと言ったら、させてくれるのかな。
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元神父の手記より。
10月4日
電車に揺られる旅は嫌いじゃない。
外が暗いからあんまり景色なんかは堪能できないが、向かい合ったり横並びに座ったりしてルシオといろんな話をするのが好きだ。
ほんの二、三時間だけだけど、ルシオが今まで見てきたものやこれから楽しみにしてる事、俺がルシオに会うまで教会でどんな暮らしをしていたかなんて事、いろんな話をするのが好きだ。まあ、もっぱらルシオが話してるのを聞いてるんだけど。
でも今日は「君は子供の頃どんな子供だったの」とルシオに聞かれて少し困った。普通だよ、なんて曖昧に答えたらルシオは「きっと可愛かったんだろうね」なんて言った。
野良猫よりひどい生活してたなんて言えないな。
そろそろ中国に着く。
ニーハオ、シェイシェ、ハオチー。
点心が食べたい。
炒飯もいいな、あとエビチリ。
白酒も飲んでみたい。
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吸血鬼の手記より。
10月7日
中国に入った。
なんというか、映画なんかで見る華々しいイメージとは違うな、と思ったけど、とにかく中国は広いからそれもそうか。
これまでのどの国とも違う。それぞれ面白い。
列車からバスに乗り換える間に通行人に食事を摂れる場所を聞いて、リヤンの夕食にした。青菜の炒めたのと挽き肉を包んで蒸したのを食べていた。メニュー名はまったく読めない。いや、ここまでの他の国の言葉も読めないけど。
漢字って凄いな。この国の人間はあれを使いこなしているのか?
親の手に引かれて夜道を歩く子供を見かけた。
リヤンの子供の頃の話を聞いたら、普通だと言っていた。今の普通の子供って、どんな暮らしをするんだろう。
昔と違って、成人近くまで学校に通って親の庇護下で暮らすと聞いているけど。
そういえば、リヤンは身寄りが無いと言っていた。
……あまり突っ込んで聞いたら、嫌な思いをさせてしまうかな。家族のこととか、もしかしたら思い出したくないこともあるかも知れない。
けど、僕はリヤンのことをあまり知らない。お酒が好きで(でもあまり強くない)、読書家で、ギターが上手で、……他は?
もっと知りたい。……嫌がられない程度に!
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元神父の手記より。
10月9日
腹がはち切れるかと思った。
とにかく食い物がうまいから調子に乗って中華まん3つも食べたからな。針でついたらぱん!ってクラッカーみたいな音立てそうだ。ルシオがやたらにやついた顔で俺を見ていたから、なにか変かと訊ねたら「おなかぽっこりしてる、撫でていい?」と言われたので腹を出したらニコニコして撫でていた。変なやつ。
しかし、中国に来ればアクションスターみたいなカンフーが街のあちこちで見られるのかと思っていたが案外そうでもなかった。じゃあ日本ではニンジャは見られないのかな。いつかニンジャ探しに日本に行くのもいいな。
観光地までは後少し移動が必要だ。
北京、北京に着いたら北京ダック食べてみたいな。
あれ?俺こんなに食いしん坊だったか?まあいいか。
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吸血鬼の手記より。
10月15日
だいぶ都会に近付いて来た気がするのに、雨が強くて立ち往生してしまった。
ホテルの近くにアーケードがあって、テイクアウトできる料理を売っている店がいくつかあったからとリヤンは両手にいろんな料理を買ってきた。
この国の料理はにんにくを効かせたものが多いし僕はあの臭いがあまり得意ではないけど、リヤンが嬉しそうに頬張って舌鼓を打っているのを見てたらそんなことも忘れてた。
出かけられない日や身体を休めたい日の恒例で、ホテルにこもって映画を観た。今日観たのは……タイトルを忘れた。10代の少年が、病気の恋人を旅に連れて行きたくて彼女が入院していた病院から連れ出して……ああもう、思い出しただけでダメだ。
……恥ずかしいけど、ものすごく泣いてしまった。それどころか、途中から辛くて隣に座るリヤンの手を握り締めてた。
リヤンは僕の顔を覗き見て(びっくりした顔をしていた気がする)黙って背中を摩ってくれた。茶化さないでいてくれたけど気恥ずかしくて、少しだけ、引かれたかな、なんて思ってしまって、いたたまれなくて映画が終わってから「コーヒーでも淹れようか」と立ち上がったけど、リヤンから手を引かれてソファに逆戻りしてしまった。
彼の琥珀色の瞳がじっと覗き込んできて、全て見透かされるような気がして縮み上がっていたら、温かくてやわらかいものに唇を塞がれて驚いた。
「俺が用意するから座ってて」と言われて何もなかったかのようにリヤンが立ち上がって、部屋を出て行く直前に振り返って「心が綺麗なひと、俺好きだよ」と言い残して行った。
いや、卑怯だろう。なんなんだあれは。どうしてあんなに男前なんだ。
……そりゃ、またキスしてもいいのかなと思ってはいたけど。情け無い僕は、一人残されたソファに突っ伏して火が出そうなくらいに赤くなった顔を冷ますのに必死だった。
夜が更けてリヤンが寝ても、寝顔も覗きに行けなかった。
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元神父の手記より。
10月15日
驚くほど豪快に雨が降っていたので今日はホテルで過ごした。
ホテルで過ごす日は決まって映画を見るんだけど、今回のはたまたま俺たちと(正確にはリーゼロッテとルシオだけど)境遇の似た恋人たちの話だったからか、ルシオが酷く感情移入してしまったらしく号泣していた。
途中から横で(ソファに並んで座っていた)俺の手を握りしめ、ひっくひっくと泣いてる様子が伝わってきていたから色々思い出して辛いのかと思って顔を覗いたら、まあ、すごい顔になっていて。驚いて慌てて背中を摩ってやった。
俺が想像するより、きっと、もっとずっと、辛かったんだろうな、200年。ルシオは普段はあんなのだけど、きっとピュアなんだろうなと思った。だからの200年だったのかもしれない。
映画が終わった後、なんだかバツが悪そうにルシオが席を立とうとしたので思わず手を引いてしまった。
目元や頬に朱が差した顔が、困ったような不思議そうな表情で見つめてきたのが、なんだか不思議な感覚だった。なんとも言えない感情が込み上げてきて、まあ、その、したよね。ちゅう。
コーヒーを淹れると言っていたので代わりに俺が行くよと席を立って、作品を見て心が動くことはなんら恥ずかしいことじゃないんだと言葉で告げたつもりだったが、いざポットに水を入れに行って1人になってみて、あれ?これはキザ過ぎたか?あれ?なんでキスしたんだ?って急に恥ずかしくなって、意味もなくポットの前で湯が沸くまでウロウロして、いざ沸いてもなんだか俺の方が気まずくて。
深呼吸を5往復くらいしてから戻ってルシオに「落ち着いた?」なんてコーヒー差し出しながら声かけたけど、それはむしろ俺が言われるべき言葉だったと思う。
好き、への返答待ってね、なんて言ったくせに、俺って最低だな。
初めてルシオとちゃんとキスしてから、キスをするの、好きになっちゃったのかも。
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吸血鬼の手記より。
10月18日
バスの窓から見える景色が、高い建物とネオンの灯りでギラギラしてきた。
映画で観た中国だ!
リヤンが北京ダックを食べたいと言っていたからとりあえず北京を目指す。あと少し。
ホテルの周りに遅くまで開いている土産物屋がいくつもあって、せっかくだからと冷やかして歩いた。
どれも作りが安っぽくて、なるほど色んな意味でこの国ならではなんだろう、って感じはした。しばらく眺めて冷やかして歩いているうちにリヤンが一軒の前で足を止めた。
どうしたの?と訊いたら、珍しいくらい笑いながら「はは!お前に似てるな!買ってくる!」だって。店の中の棚に、手のひらに収まるくらいのぬいぐるみが並んでいる中からいくつか見比べて、お眼鏡に適ったらしいひとつを握って会計を済ませてきた。
気にいるものがあったのかな?それが僕に似てるのなら嬉しいな、と思って微笑ましく思っていたら、店から出るなり僕の手に握らせてきた。
まるっこくて、蝙蝠に似た羽が生えたぬいぐるみ。笑みの形に、ぽか、と開いた口にまるっこい牙が生えている。
僕の手に握らせながら、「あげる、ほら弟だよ」と言ってきた。
弟かぁ。リヤンの目には、僕はこんな風に見えてるのかな。
だとしたら、随分と無害そうだ。
今日初めて会った僕の"弟"は頭にチェーンが付いていたから、鞄に下げることにした。
タイピンに、ぬいぐるみ。宝物が増えてしまった。
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元神父の手記より。
10月22日
やっと着いたぜ、北京。
んまぁ、結構寒いでやんの。寒いからコートやなんかを買って(手持ちのコートではやや寒かった)羽織って歩いた。
北国の出身だから寒いのには慣れているつもりだったけど、ここもかなり寒い。今まで通ってきた国が暖かいところが多かったから(夏だったし)油断していた。
北京ダックはひとまずお預けで早々に宿を取った。
客室に入るとルシオがカバンにつけてる小さいぬいぐるみと目が合った。ルシオはニコニコしながら「弟、可愛いでしょ?」と言いながそれを揉んでいた。
まんまるの体に、ぱかっ!と口が開いてる。羽の生えた饅頭みたいなフォルムだが、口から覗く牙の感じがルシオによく似てて思わず買ってしまったけど、案外気に入ったみたいだ。
明日は服装を整えて、美味いもん食べに行こうかな。
昼間は適当なもん食べて、夜はルシオといい所でメシにしよう。
観光はどこに行こうか相談したかったけど、珍しくルシオがうたた寝をしていたので毛布をかけてやった。
……明日は観光はやめておくか。
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吸血鬼の手記より。
10月23日
リヤンがずっと食べたいと言っていた念願の北京ダックを食べた。観光はやめて休もうと言われたから(僕も少し疲れていたし) それならせめてディナーを豪華にしようと思ったから。
北京ダックがどういったものなのか知らなくて、なんとなく一羽まるごと丸焼きにしたアヒルなんだろうとだけ思っていたから実際に出されたものを見て驚いた。
件の丸焼きにされたアヒルに、前菜にスープに揚げ物にとアヒル尽くしで、リヤンは喜んで齧り付いていたけれど途中から明らかにペースが落ちていた。
おなかいっぱいになっちゃったかな?と思って問いかけてみたら、バツの悪そうな顔でこっちを見るから笑ってしまった。
リヤンが気不味く思うことなんてないのに。人間同士なら、僕も彼と同じくらいの量は食べられるのだろうから。
北京ダックといっしょに軽い酒をちびちび飲んでいたけど、あれくらいじゃ流石に影響が無いみたいだ。
……ここのところ、夢見が悪い。
ずっとリヤンが一緒にいてくれるのに。
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元神父の手記より
10月23日
まさかあんな量のアヒルが出てくるなんて思いもしなかった。腹がはち切れそう。
北京ダックを食べた後、ホテルに戻る途中にいい雰囲気の店からジャズが聞こえてきたから、わがままを言って立ち寄らせてもらった。
俺たちの国にもジャズバーくらいはあるけど、異国のにも興味があったから。結果、かなり良かった。
気分よく2、3杯酒を煽って店を出た。
ほろ酔いでホテルに着いたけど、うまく表現できないが、どうにもルシオの調子が良くなさそうだ。疲れが出たんじゃないだろうか。
夜中に目が覚めて、水を飲むのにベッドから出たらソファに横になっていた。
俺に気付くと起き上がってこちらに声をかけてきたが、なんだか歯切れが悪かった。
無理をしているだろうから、明日もゆっくりしたいと伝えたら「よかった、僕ももう一日ゆっくりしたいと思っていたんだ」と言った。
ルシオはあんなにいろんなことを話してくるクセに、自分が苦しい時は何も言わない。
ここでの観光が一区切りついたら、一度国に帰るべきだろうな。
一度帰って、しっかり休んで、それからまた旅に出ればいい。
ルシオの様子が落ち着いたら申し出てみよう。
とりあえず、明日は1日ホテルにこもって映画をみる。
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元神父の手記より
10月25日
昨日ルシオを殴った。
殴ったら後ろによろけて、そのままこてんと転げて天井を仰いでいた。
一瞬、何が起きているのか理解できていない様な顔をして俺を見上げて、直後、顔をくしゃくしゃにしていた。唇が何か言いたげに薄く開いたけど、そのまま。震えて、黙ったまんまだった。
わけもなく殴ったわけじゃない。
24日もゆっくりしようと告げた後、日の出の前だったからとりあえず休むように促して、ルシオが寝たのを確認してから俺は飲み物や食べ物を買いに出かけた。
これが悪かった。
帰ったら目を覚ましたらしいルシオが床に座り込んで、俺の荷物の前で真っ青な顔をして震えていた。慌てて荷物をほっぽって駆け寄ると、ポカンとした顔と目が合った。
間抜けた顔はすぐにぐしゃぐしゃに歪んで、への字に曲がった口が情けない声で俺の名前を何度も呼んで、ルシオは縋るみたいに俺の脚に抱きついた。
俺は何があったのかさっぱりわからなくて、とにかく落ち着かせようと思った。
ルシオの手をやんわり解いて、しゃがんで目線を合わせて背中をさすってやりながら反対の手を伸ばして、放った荷物からミネラルウォータのボトルをどうにか掴んで、ルシオに差し出した。
しばらく背中をさすっていたら少しは落ち着いたようで、ミネラルウォータを受け取りながら震える声でルシオが“俺がいない夢を見た”と言った。本当は今こうして一緒に旅をしているのが全部自分の夢で、目が覚めたらまた一人ぼっちで俺を探さなきゃならない、そんな気がして恐ろしいと言った。
相槌を打ちながら、背を撫で続けて話を聞いた。
ルシオはぜえぜえと喉から不安になる音を立てて必死に息をしていた。
どこにも行かない、俺が帰る場所はお前の場所だから安心してくれと伝えて、あいつが落ち着くまでしばらくそうしてた。
10分ほど経ったかな。そのくらいで漸く呼吸も落ち着いたルシオが、「前にもそう言ってくれたのにね、ごめんね」と溢した。「疑ってるわけじゃないんだ、ただ、どうしても怖いんだ」とも。
そりゃ、200年なんて想像もつかない長い時間を1人で彷徨ってたんだ。トラウマにもなるだろうよ。
だけどあいつはその後に半べそかきながら冗談を言うような口ぶりで「君が行きたいなら、どこへ行ったっていいんだ。けど、僕はまた一人になるかも知れないと思っただけで、怖くて仕方ないんだ」「君がいなくなったら、僕は耐えられないから。だから、もしも僕をひとり置いて行くようなことがあれば、殺して行って」と宣った。
頭にきた。
気がついたらルシオの事殴ってた。
俺がどうしてここにいると思ってるんだと、怒鳴ってしまった。俺がいなくなることばかり考え続けてお前がどうにかなってしまうくらいなら、いっその事今すぐ俺がいなくなる方がいいじゃないかと。一緒にいると誓った俺を嘘つきにするつもりかと、叫んでしまった。
立ち上がりながら靴下に挟んでいたナイフを抜き取ってルシオに投げ渡して俺を殺せるか?と伝えると、ルシオは泣きながら殺すなんてそれだけは嫌だと言った。
だったらそんな事を言った“言い訳”を用意しろと言った。でも、そんなのをその時聞いたとしてどうせ頭にきてて受け止められないと思ったから、お前が言い訳を考えてる間俺は頭を冷やしてくると告げて一旦ホテルから出た。
許せなかった。
俺の気持ちはどうすりゃいい?
どうしてやることもできない、ただ寄り添うことしかできない俺はどうしてやればよかった?
バツが悪くてまだホテルに帰ってない。
本当にいなくなったと思ってルシオがヤケを起こす前に帰る。
日没までに帰る。
気不味い。
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吸血鬼の手記より
10月25日
リヤンを酷く怒らせてしまった。
怒って、出て行ってしまった。
リヤン
リヤン
僕が、酷いことを言った。
リヤンに嫌なことを言わせてしまった。
言い訳を用意しろと言われた。
……ただ、リヤンと一緒にいたい。それ以外無い。
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元神父の手記より。
10月25日 追記
日が暮れる頃にホテルに戻った。
驚いた、ルシオがエントランスにいた。
こちらを見つけるなり泣きそうな顔をして今にも駆け出しそうだったが、窓からはまだ日が差していたから、ルシオは影から出れずにもどかしそうにしていた。
どんな顔をしていいかわからなくて、できるだけいつもの顔で近寄った。アイツの手の届く範囲にたどり着くと、ルシオは人目も憚らずに俺をかき抱いてスンスンと泣いた。ごめんね、嫌な事を言わせたね。と言って泣いていた。
とりあえず背中を二、三叩いて体を離れさせて、部屋に戻るよう促した。
部屋に帰ってからルシオをソファに座らせて、俺はさっさとシャワーを浴びた。
シャワーから出たらルシオが俺の顔を見るなり立ち上がった。バツが悪い時の犬のような顔していて思わず吹き出した。
腹が減ったり疲れてたりするから滅入るんだ、食え。と言って上の服を脱ぎ散らかしながらルシオに近づいたらやたらとあたふたしてから、べそをかきながら俺を食べた。
怒るのは体力を使うから嫌だ。
言い訳は今すぐじゃなくていいけどきちんと考えて欲しいと伝えたら、ルシオは泣きながら(俺を食べながら)わかったと答えた。
いろいろあった。少し疲れたし、噛まれたから、色々弛緩した。
もう休む。
……ルシオがずっとこっちを見てる。ずっと申し訳なさそうな顔してる。
布団の中に誘ったら一緒に横になるかな?
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吸血鬼の手記より
10月26日
昨日リヤンが帰ってきた。
嫌なことを言わせてごめんと謝ったら 「腹が減っているから気が滅入るんだ」と食事を摂らせてくれた。
“言い訳”を考えろ、とリヤンが言った。
また辛い思いをするくらいならいっそ殺して欲しい、と僕が言ってしまったことについてだ。
他にも、これはリヤンからは言われてはいないけどリヤンとリーゼロッテのこと、……僕は、“一緒にいてくれるから”彼を思っているのか、とか。リーゼロッテだったからリヤンが好きなのか、リヤンがいいと自分で言ったけれど、じゃあリーゼロッテのことはどうでもいいのか、とか。
また目を逸らして自分に都合の良いことだけ考えようとしていたみたいだ。
全部引っくるめて、腹を括って、きちんと僕の思いをリヤンに伝えなければならない。
……そうは言っても顔を見て安心したくて、寝顔を覗いていたらベッドに誘われた。
そんな、この前やっとキスしたばかりでまだ心の準備が(心以外も!)出来ていない!と思ったけど、抗えなくてベッドに入り込んだら、暖かくって気付いたら眠っていた。
……そういえば丸二日近くまともに寝ていなかった。
もったいないことをした、かなぁ。
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元神父の手記より
10月27日
今日も食い物を買うのに少し出かけた程度で、あとは部屋の中で本を読んだりして過ごした。
ルシオはよく寝ていた。
すぐそばにずっといた。今日はうなされていなかった。
ルシオともよく相談した上で、フロントに連絡して宿泊日数を一週間ほど増やしてもらった。
国に帰るつもりだが、せめて少しは中国を見て回ってからにしたいという俺の我儘だ。だけど、ルシオの調子が戻らなければそのまま帰るつもりではいる。
リラックスさせてもダメなら……と、様子をみるための一週間を足した訳だ。
んで、当の本人は今日も同衾したそうな顔でこちらを見てくるから、お前は今からが“昼”だろ?って声かけたら「お“昼”寝だよ、君が深く眠るまで!……だめかな?」と、いつもの困った犬みたいな顔で俺を見るもんだから、絆されて布団に招いた。にぱ!っと笑顔になってスルっと布団に入ってきて、今、横ですーすー寝息を立てて寝てる。横になってから寝息まで3秒だった。
昨日も添い寝をしたが、こいつ案外体が柔らかくって(筋肉がゆるむ?と柔くなるらしい事を今日ネットで知った)驚いた。腕も腰も背中もふにゃんとしてて面白かった。あちこち冷えてる体が、俺の体温が移って次第に温くなっていって、なんだか不思議な感情が芽生えた。もやもやというか、なんと言うか。よくわからない。
ルシオに言い訳をしろと言った手前、俺もきちんと考えなけりゃならない。
ルシオが好きかどうか。
……嫌いならこの間のことで怒らないんだよ。わかってる。というか元々嫌いではないんだ。そう、好きだよ。
面白いやつだと思う、可愛いところあるし。いい奴だよ。そうじゃなくて、ラブかライクか。
そばにいると楽しいとか頼りにしてるとか、そう言う気持ちはたくさんある。でもそれは恋愛感情なのか?
そもそも男同士で恋愛って成り立つのか?
肉体的にはどうだ?噛まれて気持ちいいから、気持ちいい事してくれるマシーンだと思ってないか?噛まれてなくても時々あいつで抜くのはなんでだ?
ルシオは好きだと言ってくれたが、それは俺?俺の中のリーゼロッテの名残?肉体を伴って?プラトニックで?
色々と、きちんと向き合わないといけないタイミングが近いのかもしれない。
逃げたい。正直逃げてしまって無責任にだらだら旅をし続ければ楽だと思う。
ルシオが寝返りをうって俺の脚に抱きついてきた。
ほんのり温い。
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吸血鬼の手記より
10月28日
ホテルの部屋を長く取ることにしたし、観光をすることにした。
僕が調子を崩していたからホテルに篭りきりだった訳だけど、二人ともはしゃいでどこに行くか相談するにはちょっとだけ気不味くて、リヤンのあの、スマートフォンで調べて小高いところにある公園に行くことにした。
バスに揺られて、少し歩いて、目的地に着いた頃にはあたりは真っ暗だったけど高いところから見渡す景色といったら!
映画で見たような宮廷の光景が(昼間の景色は見られないからライトアップされた夜景だけど)一面に広がっていた。
リーゼロッテと、旅に出たいとは話していたけど、こんな極東まで来られるなんて想像もしなかった。
リヤンだから、ここまで来れたんじゃないかな。
並んで景色を見下ろしながら、少しだけ、指先をほんの少しだけ絡ませた。
リヤンの食事を済ませてホテルに戻ったら、リヤンから僕の食事もすすめられた。
昨日ももらったのに悪い、と断ろうとしたけど、「おやつだ、おやつ。それに腹が減ってるから気が滅入るんだって言っただろ」って一蹴されてしまった。
じゃあ、と少しだけ貰おうと思って齧り付いて、熱くて甘いのを啜っていたら、「食べた女を抱いたことある?」って訊かれた。
答えづらい質問だけど、リヤンに嘘は吐きたくないから。「少しだけ」と濁して頷いた。
最近のリヤンは僕に噛まれて息が上がっているし、随分と艶っぽくなってしまうからリヤンなりに間が持たなくて話題を捻り出していたのかも知れない。男は食べたことある?と訊かれて、首を横に振った。
「俺のことは、抱ける?」と訊かれた。思わず、啜っていた血と空気を一緒に飲み込んでしまって喉がぐびりと鳴った。
……リヤンに嘘は吐きたくないから、頷いた。「抱ける」と答えた。
びっくりした顔をしたリヤンが笑い始めて、ああこれは冗談だったってことにしようとしてるなと思った。
リヤンは、僕のことを酷く無害な男だと思っている気がしていたけど、情欲を向けられると思っていなかったんだろう。意識されていないのかな、と悲しくなることすらある。
リヤンが嫌になってどこかへ行ってしまったらと思うとやっぱり物凄く怖いけど、ずっと一緒にいるなら僕はそういう目でリヤンを見ていると知ってもらわないといけない。
冗談ならそういうことは言わないで、と釘を刺して席を外したけど、部屋を出てから身震いしてしまった。
男同士の関係が受け入れられないとリヤンが離れてしまったらどうしよう、と頭をよぎったから。
……リヤンが思うほど僕は善人じゃないから。形があるもの、縛り付けられるものを贈ったら、無理矢理にでも意識して貰えるかもしれない。
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元神父の手記より
10月29日
やらかした。
昨日、ルシオが俺を食ってる時に間がもたなくて冗談半分で俺を抱けるかと聞いたら、ひどく真っ直ぐ「抱ける」と答えた後に冗談のつもりならそういう事を訊くなと言い、ルシオは食うのをやめて部屋を出ていってしまった。
ルシオは紳士だから、そういうのを言わないと思い込んでいた。ルシオにも性欲があって(女を抱くのだからあるんだろう)、更に俺の事を思ってくれていて、そうなったら……俺を抱きたいと思う事があるかもしれない。少し考えればわかったかもしれないのに、無闇に嫌な思いをさせてしまった。
やってしまったなと自己嫌悪に陥りながらも、首からまだ血が滲んでたからティッシュで拭って圧迫して、色々な事を悶々と考えていたら、少ししてからルシオが部屋に帰ってきた。悪かった、と謝るとルシオはわかってくれたのならいいんだと言った。夜も深かったからもう休むようにとルシオが言うのですごすごとベッドに入り寝たフリをした。
ここのところルシオは昼寝(夜だが)をする。
寝ている間は何をしても起きない。この間の晩にいじり倒した時も全く起きなかったから実証済みだ。
ルシオは俺を抱けると言った。じゃあ俺は?
俺はルシオの体に触れたいと思ったことがあったか?と振り返った。宮廷を見た時緩く絡んだ指、嫌じゃなかった。いつか湖畔で手を繋いで帰ったのなんて俺から手を握った。キスもした、俺から。
寝たふりをしながらそんな事を悶々と考えた。
居ても立っても居られなくなり水を飲みに行くフリをしてソファのある部屋へ行くと、案の定ルシオが昼寝をしていた。
大きめのカウチ風ソファに寝てる姿が異様なまでにサマになってて、なんか妙な震えがきた。
俺はそーっと近づいてルシオの頬をむぎゅむぎゅ摘んで起きない事を確認してからそばに座り込んで、ルシオの胸板とか腹とか指でなぞってみた。それからもっと触りたくなってベストもシャツも前をひろげて素肌に触れてみた。もっともっと触ってみたくなって、ベルトに手をかけて、ジッパー下ろそうとしたら、その、おっきくなってて、中身確認しようとしてズボンの前を開けて下着に手をかけたところでルシオの手が俺の手を掴んで引き寄せた。ぐんと引かれて(痛くはなかったがすごい力だった)ルシオに乗り上げるとそのまま抱きしめられた。
どくどくと、すごく早い鼓動がルシオの胸と俺の鼓膜の奥から聞こえて、どっちがどっちの音かわからなかった。
深呼吸が聞こえたから顔を見ると、ルシオが俺の顔を引き寄せて、勿体ぶってからキスをした。
唇、吸ったり食んだり、噛んだり舐めたり。
たっぷり時間をかけてキスをされて、身じろいだらルシオの脚に俺の股間が当たって、俺もすげぇ勃ってるのそこでわかって。
俺、ルシオで興奮するんだ。噛まれるからじゃない。
ルシオの体、もっと触りたいって思ってた。やらしいことしたい気分だった。もっともっと触って、気持ち良くなりたいって思ってた。
……ルシオはスッとソファから身を起こして席を立った。俺は息も上がったし勃起してるし、どうしようって半ばパニックでベッドルームに戻ってベッドでのたうっているうちに寝ていた。
ルシオ、何も言わなかった。さらに怒らせたのかもしれない。
今、朝の4時。
ソファの部屋のルシオの気配、どうにも起きてるっぽい。
どうしよう。
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吸血鬼の手記より
10月30日
なんっっなんだあの子は!!僕はどうすればいいんだ、どうすれば、どうするのが正解だった!?
教えてくれ、誰か!
ここのところ昼寝(夜中だけど)をするのが習慣づいてしまって、昨夜もソファで寝ていたんだ。リヤンはベッドで寝ていたから。
そう、ベッドで寝ていたんだ。寝ていると思っていたんだ。
夜中、もう深夜だったと思うけどリヤンが起きてきて、寝入っているところに顔を思い切り揉まれて驚いた。驚きはしたけど、目を開けなくても匂いで誰かわかるからちょっとの悪戯心もあってそのまま寝たふりをしていたら、リヤンが僕の身体に手を伸ばしてきて……僕が起きたって気付いていないようだったから、薄目で見ながら好きにさせておいたんだ。
あの細くて長い指が、何か確かめるように僕の身体を這って、胸元から腹まで辿ったかと思うと、ベストのボタンを外し始めた。
身体のラインを辿るような手つきだったから、きっと布の縫い目やらボタンなんかが邪魔だったんだろう。
シャツまで開いて、素肌に彼の手が触れた。
……リヤンは緊張すると酷く指先が冷えるのに、熱い指が鎖骨の隆起から下腹部までをうろうろ彷徨って、何をしてるのかな、もしかして夜這いにきてくれたのかな、と僕に都合の良いことを考えていた。
リヤンから、彼のことを抱けるのかと訊かれて正直に答えたし、そういう冗談はやめて欲しいと言ったから、もしかして冗談抜きで“そういう行為”をしにきてくれたのかな、と思った。
僕だってれっきとした男だし、リヤンから誘われたら断る理由なんて無い。
ほんの少し期待して、けどリヤンだからな、あのリヤンだから、まったくそんな気が無いってことだってあり得る。僕はここまでの旅で学んだんだ、って気を強く持とうと決意を固めたところで、リヤンが僕の胸に顔を寄せてきて驚いた。
顔というか、唇だ。胸を、乳首を指でつつかれて、そこに顔を寄せて胸を舐められて飛び上がるかと思った。
驚いていたら、「味はふつう……」と呟いていた。
普通!?普通ってなんだ!?僕は女を抱いて胸を舐めても「味はふつう」なんて感想抱いたことないぞ!?
というか、何と比べての“普通”なんだ!?もしかして僕の知らない間に人間ってそういう風に進化しているのか!!?
僕の頭の中が完全にパニックを起こしている間にリヤンはあの無邪気な好奇心(なのか?)でもって探索の手を広げていて、気付いたらベルトの前を外して、スラックスに手をかけていた。
はっとした。まずい。勃ってる。
物凄い葛藤が生まれた。どうする?もしリヤンがその気なら、このまま抱いてもいいんだろうか。
けど、そんななし崩しみたいな抱き方でいいんだろうか。
というか、僕はリヤンがどれくらい経験があるのか知らない。婚前交渉が当たり前の世の中だけど、リヤンは聖職者だった訳だし。あまり浮ついたイメージが無い。
もし経験がないとしたら、このままソファで、なんて、犬猫みたいな抱き方をしていいのか?
もっとちゃんと準備をして、彼に言われた“言い訳”も伝えて、それからの方が。
なんて僕がぐずぐず考えている間にリヤンの手は下着にまで伸ばされていて、咄嗟にその手を掴んでしまった。
細いけど、骨ばった男の手だ。その手を熱り立ったものに触れさせたいのを堪えて、身体ごと引っ張って抱き締めた。
まだダメだ。いつか絶対に、とは思うけど、きっと今じゃない。
必死で欲を抑え込みながら、キスだけはもらって、リヤンを残して部屋を出た。
けれど、離れる間際のリヤンの目が、はっきりと欲に濡れていて、未だに何が正しかったのかわからない。
部屋から出て離れたところで篭ったものを処理してから、思った。
乳首みたいに、もしも逸物に対して「味はふつう」なんて言われたら、僕は立ち直れる自信が無い。
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元神父の手記より
10月31日
昨日の朝は起きてベッドを明け渡す時に、勝手に触って悪かったって事と起きてるなら早めに言って欲しかったって事を伝えたら、ルシオは曖昧に微笑んで「気がついたら君が下着に触れてて慌てたんだ。だから、その、許して?」と言った。
ほんとぉ?心臓ばっくばくだったじゃん、って喉まで出かけたけど飲み込んだ。だって俺もよく分かんないけど心臓ばっくばくだったから。
そのあとはお互いギクシャクしてたけど、夕方ごろには落ち着いて一緒に映画を見て、それから別々の部屋で体を休めたりした。
今日は昼間っから街がハロウィンで賑わっていたから、日が暮れてから、すれ違う人の殆どが仮装して浮かれている街をルシオと2人で歩いた。
俺は露店で売ってた悪魔のツノみたいなカチューシャを買って雑に仮装を楽しんだ。
吸血鬼の仮装をしてる連中の横を通る時に「俺の横には本物の吸血鬼がいるんだぞ」と、胸の中で(なぜだか)ドヤ顔をしていた。
ホテルに帰ってからシャワーを浴びてバスルームから出たら、先にシャワーを済ませていたルシオがソファに腰掛けて俺がつけてたカチューシャをつけて遊んでいたので「似合うな」とか言いながら横に座った。
深呼吸してからルシオに飯を勧めると、つい先日もおやつをもらったばかりだと断られたけど、俺、その、噛まれたかったんだ、その時。ルシオに噛まれたかった。だから思わず縋り付くみたいに寄りかかって、ルシオの胸に顔埋めて「ごめん、本当は噛んでほしいんだよ、俺が」って言った。そうしたらルシオが、ぐんと俺の顔を両手で挟んでルシオの方を向かせて「いいかいリヤン、僕はこれ以上は紳士なんかじゃいられない。これは最後の警告だからよくお聞き。僕は“抱ける”ではなくて“抱きたい”んだよ。だから、よく考えてね」と言ってしばらく俺の顔を見つめて、また唇を弄ぶちゅうをした。俺、すごく息が上がってだと思う。
そのあと、ルシオが俺を噛んだ。
食事が終わったあと、しばらくソファでだらけてからルシオにおやすみを言ってベッドルームに移動して、こっそり下着を履き替えた。
バレずに済んでよかった。
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吸血鬼の手記より
11月1日
ハロウィン、ていうのは、この国でもやるんだな。知らなかった。
年若い人間が、肌を晒してはしゃいで歩き回っていた。酒と化粧の人工的な臭いと、汗と脂の匂いが立ち込めていた。
リヤンが食事を摂らせてくれるし、まだ腹が減っていなかったのにおやつまでくれたから。品定めすることもせずにリヤンにだけ意識を向けていられた。
リヤンは頭につけるツノみたいなものを買っていた。本格的に仮装したい訳では無いけど雰囲気は味わいたいってお上りさんまんまの格好だ。かわいい。
この国の人間とは人種が違うから、お上りさんそのままの格好のリヤンは逆に目立って露店の駄菓子をおまけしてもらっていた。
そうだろう、僕のリヤンはかわいいだろう?と胸のうちで自慢しておいた。
ホテルに帰って、そういえばテレビなんかのデフォルメされたキャラクターみたいな吸血鬼の仮装をした人間がいたなと思って、リヤンがシャワーを浴びている間に彼が買ったツノをつけてみた。
つけたはいいけど僕は鏡が見られないからそのまま過ごしていたら、シャワーを済ませたリヤンが横に座って食事を進めてきた。
人間の脂の匂いをたくさん嗅いで腹の虫は鳴いていたけど、リヤン以外食べたくはないし、だいいちそんなに毎日齧っていたらリヤンの身体に障りそうで嫌だ。
昔は瀉血が身体にいいとされていたけど、そんなに毎日していい筈がない。
そう思って毅然と断ろうとしたら、僕の胸にしなだれかかって「噛んで欲しいんだよ」だって。
それも、シャワーを終えたばかりだから……まるで皿の上に綺麗に盛り付けられた肉料理が湯気を立てているよう。しかも僕は一昨日軽く彼を齧って、空腹すぎず、満腹でもなく、メインディッシュに齧り付くには丁度いい腹具合だ。
おそらく、噛まれた際に気持ちよくなってしまうんだろう。僕らの牙にはそういう効果があるらしいから。
僕の食事にかこつけて、噛まれて気持ちよくなってしまって、彼が自慰をしていることは知っている。
昨日の今日で、初めてきちんと自信を持って言えるようになった。
リヤンは僕に欲情している。……たぶん。
……ああそうか、わかったぞ?最近毎日昼寝をする理由。
人間の、高名な医者か何かが三大欲求ってものを唱えていたのを何かで聞いた。食欲と性欲と睡眠欲だそうだ。
僕が毎日腹いっぱい食べたらリヤンが失血死してしまうから、リヤンの体調を見ながら少しずつ齧る。
リヤンが男同士の性交渉の経験があるかわからないから、抱き合うまでにはもっと時間をかけたい。
僕の三大欲求、ひとりで満足に満たせるのは睡眠欲だけじゃないか!
毎日昼も夜も寝ていてだらしない気がしていたけど、食欲と性欲をカバーするためならたくさん寝よう。
吸血鬼の本能が人間と同じかわからないけれど。
噛んで欲しいなんて煽るようなことをしてくるリヤンを軽く脅してから食事をして、細い身体を抱き締めた。
きっとこの後リヤンは自慰をするんだろう。その時に、僕に抱かれることを考えてしてくれるといいと思って、膝に抱いて、抱き締めた。キスもした。
……僕は、僕たち吸血鬼は人間よりも耳も鼻もはるかにきくから。
リヤンの下着の中に溢れたものの匂いは気付いたけど、指摘はしないことにする。
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