第3話 そして逃亡
もちろん俺が小さな、取るに足らない子供とは察知させず、思い切り濃密な魔力を極大に大きくし、何か巨大な魔力のモノが近づいているとだけが分かる状態にした。
予想通り2匹の大猪達は驚いて前方へ猛前進した。
(よし!作戦通り!)
2体の大猪は待機していた4人の所へ突進している。俺は大猪達が方向転換しようとしても、動きを変えて移動経路を俺の仲間のいるところへ誘導していった。そして、
ドーーーーン!!!!
強烈な衝撃音が聞こえ、熱風が大猪の遥かに後方にいる俺の肌にも感じられる。ノアの巨大な火魔法だ。そして荒れ狂う風の余波が俺に届いた。アリスの発現させた旋風だろう。
俺は猪の後ろから走り込み現場に着くと、2体の大猪が体中を切り刻まれ全身を焼かれながらも土壁に猛烈な突進をし、破壊しているところだった。
子供の方は弱っているが親の方まだ交戦の強い意志が感じられた。かなりの興奮状態になっている。俺はすぐさま子供の方の体の上に飛び乗り、首の後ろの頸椎辺りに手刀を放った。
ガシュッ!!!!
魔力収斂で手の部分を強化し子供の大猪の首の骨を断ち切った。血飛沫が上がり断末魔の叫び声が辺りに木霊して静かに倒れて行った。
「フゴオオォォォォォォォ!!!!」
血走った目で親猪はこちらを見た。子猪が絶命されたのを見て更に逆上した。
(やべぇ)
俺は足を魔力で纏いサッと木の上に飛び跳ねた。
ドン!!!!!!!
大地を蹴る音が辺りに響き、激烈な突進が俺を襲ったが、俺は既に木の上。俺の脚の下を巨大な大猪が過ぎ去った。しかし俺の逃げ込んだ先を視認したのだろう、俺がいる木の幹に体当たりしてきた。凄まじい勢いと速さだ!!!!
ガーーーーン!!!!!!!
メキメキと巨大な木が折れて倒れていく。俺もあまりの早い展開に着いて行けず木と共に地面に叩きつけられた。
「ガハッ!!!」
俺は巨木の下敷きになり動けなくなった。背中から巨大な木と共に地面に激突して肺から空気を全て吐き出したような感覚だ。
その上を大猪は俺を狙って踏み殺そうと突進を続けようとした。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
へレーネが水の奔流を大猪の側面に叩きつけた。あまりの勢いの水流であったので大猪は周囲の木々を薙ぎ倒して5メートルほど吹き飛ばされた。
フィンは土を思い切り圧縮して頑強にした土塊を複数出現させ回転させながら大猪の腹部にぶつけた。
ドシュッ!!ドシュッ!!ドシュッ!!ドシュッ!!
鉄のように硬くなった圧縮された土は大猪の体内に捻り込んでいった。
「フギッ!!」
そこへ再び火炎放射と周囲を切り刻む旋風が大猪を襲った。ノアとアリスだ。
火と風の衝撃が大猪に直撃した!と思われたその直前に、大猪の体が金色に輝いた。
ドガーーーーン!!!!
火と風に包まれ、大猪を覆うように巨大な一本の竜巻が発現し、周囲の土や岩、樹木などが舞い上がり、上空へと巻き込まれ、吹き飛んでいった。大小の石や土、木が周囲を猛烈なスピードで飛び交い、視界が全く見えない状態となっていた。大猪は魔力解放を使い自分の体を魔力で覆ったのだろう。こちらの攻撃は全て大猪が解放した魔力により相殺されている。魔力量を見ると、果てしないほど巨大な魔力量だった。
魔力を使っての交戦において視界の情報はあまり必要ない。これほどの至近距離で戦っているおり、お互い魔力を探知できるのでその感じられる魔力でお互いの位置が把握できるからだ。
さて今、大猪は不思議な感覚に襲われているに違いない。なぜなら・・・
俺たちの魔力反応が全くないからだ。
俺たちはヘレーネが水魔法を放った瞬間に、撤退の準備をした。俺は皆が攻撃をしている間に魔力収斂で損傷個所を回復。体の上に覆いかぶさっている木を魔力収斂で切り脱出していた。ノアとアリスと俺で1メートルの子猪を運び、既に俺たちのアジトへと急いで帰っていった。その時も俺たちは魔力隠蔽をしながら大猪の追撃から逃れるようにして逃走していた。
後方からは怒りの咆哮が耳をつんざくように響き、森全体を覆うようであった。俺たちはその姿を見ることなく、命からがら逃走するのだった。
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