第二八話 大事なところは秘密にするのよ

第28話



「シュタイン。ちょっと時間かかるけれど、大丈夫かしら」


「ああ。嬢ちゃんが来るって先触れで聞いていたから、時間を空けておいたので大丈夫だ」


「さっきの、水洗トイレの話からするね」


「おう。嬢ちゃん他にもあるのか?」


「あるよ!」


何故かわたしの答えにシュタインは、露骨に嫌な顔をしましたが、それを無視して

「水洗トイレを作るのには、

先ずは水を貯めるところのタンクと呼ばれるところ。

座って用をたすところ。それは、水が貯まるようにして、そこにう○ちや、おしっ○こが入っても大丈夫にして、タンクから水が流したら、排泄物ごと流れる仕組みにするの。

それに、汚水を綺麗にする為の浄化槽を作ります。

浄化槽は、スライムちゃんが出入り出来るようにします。

そして、スライムちゃんが、汚物を食べ終わったら、スライムちゃんの排泄物を流す水路をつくる。

こんな感じです」


「むむむ。何か聞き慣れない物ばかりだな。

作り方が全くわからんわ」


「それじゃ。ちょっと絵を描くね。

そのあと、スライムちゃん達の行動の検証ね」


わたしとシュタインは、工房の中に入り、絵を描きながら説明をしました。

(トイレなど落ち着いたら、おトイレ用の紙。そして書類としても使える上質な紙も作らないと駄目かも)




「なるほど、なるほど。

これなら一~二日で作る事が可能だな。

問題は、水を作る魔導具に使う魔石だな。購入するとしたらかなりの額になるな。 買うよりも、冒険者に依頼した方がかなり安くなるな」


「シュタイン。魔石は買う以外に手に入れるとしたら、魔物を倒せばいいの?」


「そうだな。魔物を倒すと魔石がとれるからな」


「魔物を倒すと出てくるの?」


「そうだ。水を出す魔導具なら、ある程度強い魔物じゃないと駄目だな」


「オークなら大丈夫?」


「オークならお釣りがでるほどだな」


「ふ~ん」

(後で、倒しに行こう)


「後は、スライム達の実験と検証だな」


「うん。そうだね」


そうして、スライムちゃん達に、野菜やお肉のクズや飲み物など与えて実験をしました。

三人とも、きっと無限に食べ喰いが出来るようで、排泄物は無味無臭で川に流しても大丈夫と判断しました。

そして、どうでもいい事ですが、一気に食べると消化するまで大きな体になることも判明しました。



「嬢ちゃん。どうやら浄化槽は、スライムが大きくなるから、寸法を変えないと駄目だな。

大きくなった奴らを見たから、それを基準にしてもう一度、俺が作っておくぞ」


「シュタインよろしく。あとお父さんがこっちに来たら、鍛冶師や錬金術師も集めるように言わないと駄目だね」


「おっと、それは、待ってくれ。

工房は、俺の弟子達だけにしないと、作り方の情報が外にでてしまう」


(なるほど、この世界では、情報はお金になるのよね。

特に物作りは、秘中の秘 よね。

でもそれだと生活水準の向上が遅れてしまうのよね)


「シュタイン。今までは、確かにその通りよ。

でもね。貴方とその弟子だけで、フーマ王国内に行き渡るだけ商品を作ることが出来るのかしら?」


「できる」


「そうかしら。

わたしには、水洗トイレを作って王都の街で流行したら、火を噴くような忙しさに目を回している、シュタインと弟子達が手に取るようにわかるわ」


「何よりも、水洗トイレが流行るとは限らないだろう」


「いいえ。流行るわ。

もし、流行らなくても、少なくともベルティンでは、かなりの数をつくるようになるわ」


「そんなこと、わからぬではないか」


「シュタイン。

わたしは、公爵家の長女なのよ。

しかも貴方たちが一生懸命に作っている漂白剤の容器の中身を作っている商会の創立者で、たった数日でお金持ちになったのよ。

少なくとも、ベルティンブルグ領地内では、公共の場に、水洗トイレを設置するわ」


シュタインはアワアワしています。


「ちょっと話を変えるわね。

アルコール消毒液も漂白剤も、いまだに類似品。マネされていないわよね」


「そうだな」


「アルコール消毒液は、蒸溜する事を、わたし達が秘匿している。

漂白剤は、わたしだけが原液を作る事が出来る」


「あ。そうか、大事な部分だけを秘匿して、誰でも見てわかるところは、作らせればいいのか!」


「ふふふ。さすがね。

水洗トイレの浄化槽は、誰でも作れるけれど、汚水を浄化出来るようにするのは、スライムちゃん達に命令できる、わたしだけだよね」


「おおお!

嬢ちゃんは天才だな」


「そんな事はないわ。

実は、水洗トイレの便座もわたしにしかわからない第二弾があるの」


わたしはその案をこっそりとシュタインに教えました。


「あははは。

嬢ちゃんは本当に5歳児か?」


「うん。最近よく言われる」


「後は、初見の人でもこのように話せるようになればいいだがな」


(放っておいて。人見知りは中々治らないの~)


そして、わたしは、迎えに来たお父様とお屋敷に帰るのでした。

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