1章 友〜中編〜
「晴が俺達の悪口言ってるらしいよ。」
僕は、本を閉じて龍の方を見た。
晴は小学校の時、関西から転校してきた明るく気さくなやつで、龍とはまた違うベクトルで人気者だった。僕達はいつも四人で行動していたのだが、中学二年にあがって、晴だけ別のクラスになったことによって、四人での行動が少なくなった。
正直、晴がそんなこと言うようなやつには僕は思えなかったけど、龍に詳しく話を聞いてみた。
事の発端は、優樹と同じ委員会に入っていて晴と同じクラスの田中という男が優樹に伝えたらしい。それを聞いた優樹は龍を呼び出して二人で話を聞いたら、僕らと居た時は面白くなかったとか、俺だけ省いて遊んでる最低なヤツらとかを言っていたらしい。
僕は一つ引っかかる所があったから聞いてみた。
「どうして、その田中の言うことがそんなに信じられるの?」と。
すると龍は、「逆に聞くけど、田中がわざわざ俺らに嘘つく理由あるか?」と逆に問いただしてきた。
僕はその時、返す言葉がなかったが今考えると沢山考えれる理由はあった。
僕は、とりあえず晴に直接聞いた方が早いと思ったので龍にその事を言うと
「それもそうか、よし。久しぶりに四人であの場所行くか。」
そうだね。と僕達は放課後、晴の教室に呼びに行くことに決めた。
あの場所とはかつて四人で遊んでる時に見つけた
凄くちんけな公園の事だ。僕たちの地元には凄くでかい公園があるからだいたい皆そこに行く為、人が来ないし、何より殺風景だった。
路地裏を抜けた先にあるから周りには何も無いし
あるのは長いベンチ二脚にテーブル、砂場と、地面に半分埋まったタイヤだけだ。
僕達は誰も来ないから自分たちの秘境としてよく遊びに使っていた。
話に一段落着いたと思ったら二人は晴の事悪く言い出した。
僕にはそれが考えられらなかった、もしそれが嘘だったら彼等のしてることはその陰口と同じだし、もし言ってたとしても、言ってたから俺らも言って良いとはならない。
僕は、相手にせず本を読んでいた。
ガラガラと扉が開く音が聞こえると同時に
「はい、席に着いて〜ホームルーム始めるよ〜」
担任の先生の声が聞こえて、龍は前を向き、優樹は自分の席に戻って行った、僕はそっと本を閉じた。
授業はいつもと変わらず進んでいく、龍も話しかけては来るが晴の事じゃないただの世間話だ。
ただいつも通り授業を受けて、休み時間に他愛もない話をする。そして、お昼ご飯を食べて少し長い休憩。
ここでまた、二人は晴の事を話しだした、
「ホントなら許せない」とか「絶交しようか」など、僕はその空気に耐えられなくなってトイレに行くと言って席を外した。
トイレに行って数分、まだ話してるのかな、話してるとめんどくさいななんて思いながら席に戻ると2人の姿は無かった。ほっ、としたのもあったがどこに行ったか気になったので隣の席の一年から同じクラスの女の子にどこに行ったか聞いた。
「あぁ、なんか次の体育の先生になにか手伝い頼まれてたよー」
「大変だねぇ君も、なんかずっと晴がどうとか言ってたけど、なんかあったの?」
あぁ、大丈夫だよ、大した事ないよ。と応えると
女の子はそっか。と言って友達と談笑に戻った。
良かった、居ない時に呼ばれて、と思いながらまた席に座って本を読み出した。
チャイムが鳴る5分前に体育館に行き体操服に着替える。二人はもう体操服に着替えて僕を見つけるなり「お前〜めちゃくちゃダルかったんだぞ!」と言ってきた。
僕は、肩を叩きながらお疲れ様と一言だけ言って先生の元に向かう。
お昼の後の給食はしんどいなと思いながらも頑張って、その後の授業は疲れて寝てたので覚えてない。終わりのホームルームで先生の話を聞きながら、僕はそろそろかと思い、面倒臭い気持ちと少しどうなるのかという思いに馳せながら時間を過ごす。
キーンコーンカーンコーンという音色が2回なり
みんなが各々帰る準備をする。
周りのと友達にまた明日と声を掛け龍と優樹を待つ。
二人が来たと同時に龍が「よし、行くか。」と言って僕達は晴の元に向かう。
二人の足取りは重たいだろう、そりゃそうだ内容次第では小学校からの友人が一人離れるのだから。そんな中僕の足取りは思ったよりも軽かった。
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