真夏の思い出 by せい
これは、僕が中学で出会った面白い先生の話だ。僕の通う中学では、毎年夏休みの終盤に生徒だけのお祭りみたいなものが行われていた。
そのお祭りは「夏期講習会」と呼ばれていて、各学年でそれぞれ一クラスが選ばれて、朝から夕方までみっちり勉強をするというものだ。
ちなみに僕はその「夏期講習会」で初めてその先生と出会った。
僕が通っていた中学校はいわゆるヤンキー校と呼ばれるところで、ちょっとでも悪いことをするとすぐに担任の先生が怒ってくるようなところだった。
そんなヤンキーが集まる学校だから、勉強なんて真面目にするわけもなく、成績が良くないとすぐに補習授業に呼ばれる。
そこで僕が出会った先生はとても怖かった。
怒ると本当に怖くて、その先生が怒ればクラス全員がビクッと震えるほど。
「夏期講習会」は午前中で授業が終わる。
午後からは各自自由行動だ。
でもほとんどみんな学校に残って、友達と遊ぶか、教室の片隅で勉強をしているかどっちかだった。
僕もいつもと同じように教室に残って宿題をしたり、教科書を読んでわからないところを調べていた。
そんな夏期講習も終わり、最終日の昼、僕はいつものように残って宿題をやっていると
先生は「お前らも勉強するより他のことしたいよな?」と僕たちに聞いた後、突然こんなことを言い出した。
「お前ら何やりたい?」
僕たちは一瞬何を言われたのかわからず、みんなポカンとしていた。でも少しして先生はみんなが状況を飲み込めていないことに気付いたのか、続けてこう言ったんだ。
「勉強は少し疲れただろう。だから最後くらいみんなで遊びをしようじゃないか」
そしてこう続けた。
「私は中学のときに夏祭りでお化け屋敷を開いたことがあるんだ。そのお化け屋敷の出し物の中で面白いのがあったから、それやってみないか?」と。
僕は最初理解が追い付かなかった。多分周りの人も追い付いていなかったと思う。それもそのはず、普段の先生ならこのような発言は絶対にしないからだ。
しかし、他の人も勉強に飽きていたのか、すぐに乗り気になって先生の意見に賛成した。
「よし!じゃあ決まりだな!早速準備しよう!」と言って、みんなでお化け屋敷の出し物の準備をして、当日の夜を待った。
そしてお祭り当日。
先生は僕たちの教室を使ってお化け屋敷をオープンした。
そのお化け屋敷はすごかった。本当に怖いとしか言えないほどに。僕も何度も気絶しそうになったほどだった。でも楽しかった!みんなもすごく喜んでいた。
しかし、お化け屋敷は準備が大変だったからみんなクタクタだった。最後の方はもう体力を使い切ってしまいほぼ死屍累々って感じだった。
そんな状態でも、みんな笑顔で教室を出ていった。
「楽しかったね」って言い合いながら。
そして、そんな夏もあっという間に終わり、二学期が始まった。その時にはまた、以前のようなビシッと厳しい先生にもどっていた。そして、卒業までその姿勢を崩すことはなかった。
僕はそんな先生の面白い一面を見られたことを誇らしく思いたい。
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