Episode069 誕生日プレゼントへのお返しはアリですかね?

食事が終わり、皆で片付けをしている中、ヘルメは感心したような顔をしている。

俺からしてみたら何ら驚くことのないことに、何かあったんだろうか。

まあ、客観的に見たら気付けるのかもしれないが。


「……何に驚いているんだ?」

「いや、今まで家の中は覗いたことなかったから知らなかったけどよ……。まさかオメーも家事を手伝うとはな……」

「今の日本知らないだろ」


俺の短いツッコミに、ヘルメは意外と素直に頷いた。

亭主関白なんてもう古いと思っていたんが、この世界じゃまだそういうのが根強く残って続いているんだろう。


「確かに、言われてみればそうですね。最初からアヅマくんが手伝ってくれていたのですっかり忘れていましたが、基本的に男性は亭主関白なんだそうです。私のお父様みたいな例外もいましたが……」


ユイナもそう言っているし、この世はまだそんなもんらしい。

この中で他に普通の人間であるミュストとシズコの場合はメイドさんとかがやっていたんだろうし、似たような感じであろうヘリュミとタシューの場合も、ケモミミの基準じゃアテにならないだろうし、こうなってくると亭主関白の例を知る術はないな。

もし分かったら「俺みたいにモテるようになるには、とりあえず家事を人任せにするな!」って呼びかけるときに使えたんだが。

まあ、俺みたいなヤバいハーレム野郎がそういうこと呼びかけたら、そうやって例を出さなくても皆が家事に協力するようになるとは思う。

それはともかく、そろそろ片付けを終わらせてプレゼントを知りたい。



やっと晩御飯の片付けが終わり、俺たちはテーブルにて。


「それでは、アヅマくんに誕生日プレゼントをあげましょう!」


遂に、俺はこの世界で初めての誕生日プレゼントを貰うのだ。

この世界だと誕生日に何をあげるのが適切なのかとかは気になったが、もし知ってしまえば何を貰うことになるのか見当が付きそうでやめた。

だから、今の俺は何がプレゼントなのか全く分からない状態にある。

俺としては、プレゼントは高いとか安いとかではなく、気持ちの問題だと思う。

だがしかし、この世界でもそうだとは限らない。

さっきの亭主関白の話にしても、日本と同じではなかったのだ。

何が来てもいいリアクションを――できるだけ自然に――見せられるようにと意識しながら、俺は皆がテーブルに並べられた包装の中身を楽しみにする。


「それでは、まずは私からです! お誕生日おめでとうございます、アヅマくん!」


まず最初にユイナがそう言うと、小包を渡してきた。

何が入っているのかワクワクしながら小包を開封すると、ペンダントが入っていた。

『解析』曰く、『瀕死に至る攻撃・瀕死に繋がる攻撃一回無効』という効果があるらしいが、そんなアイテムとは思えないほどに綺麗な宝石がはまっていた。


「昨日、私のことを身を挺して守って精神生命体になったあなたには必要ないかもしれませんが……。私からのプレゼント、どうですか?」


……もしかすると、ユイナは昨日の俺が見舞われたような状況がいつか来るってのは分かっていたんだろう。

だからこそ、こういう身代わりアイテムだったのだ。

……そして、今の俺は生まれて初めてプレゼントで泣きそうになっている。


「……俺は、プレゼントは気持ちが大切だって思ってるんだ。だから、このプレゼントは今まで貰ったプレゼントの中で一番嬉しい」


俺のその一言に、俺の人生を変えた少女は目を見開いた。

本音で言ったからな……。大げさにそう言ってると思われてないみたいでよかった。

ユイナは零れそうになった涙を手で拭い、俺に満面の笑みを見せてきた。

それもまた、俺にとっては最高の誕生日プレゼントである。



その後も、皆からプレゼントを受け取った。

シズコからは魔力と魔法の威力・効果の増強が可能な杖、カミナスからは自身の鱗から作り出した胸当てと小手、ミュストからは高難易度マジックのショーとハグ、ジェルトからは本人執筆の『魔力でできた身体の仕組み』という本、カカリとマルヴェからは2人の魔力を注いだお守り、コトネからは手作りの布団、ヘリュミとタシューからは3人で使うマフラーを貰った。

どれも俺からしてみれば、――複数『最も』があるってのも変だが――最高のプレゼントだったと思う。

前世じゃ、図書券5000円分をポイと渡されることしかなかったからな。

まあ、あの両親が忙しくなかったらどうなっていたかは分からんが。

それはともかく、最後にヘルメからも貰えるらしい。

今日この世界に降りてきたばかりのヘルメが俺に与えられるものってないんじゃないのかと思いはしたのだが、彼には『魔法創造』がある。

きっと、それで何か魔法を作り、ソレを俺に見せるんだろう。

そんな感じで、俺が『魔法再現』でコピーするのが誕生日プレゼントなんだろう。

今の彼には、そのくらいしか用意できるはずがないからな。

そう思いながら、俺はヘルメに向き合う。


「オレからも、オメーに誕プレやるよ」


イケメン神はそう言った直後、俺の頭に手を置いた。

……いくらイケメンだからといって、撫でられるのがプレゼントって喜ばないぞ?

それこそ、女子にやらないと……ん?

なんだか頭に、何かが流れてくるような感覚がするんだが。


「フッフッフ……。聞いて驚け! オメーへの誕プレは、オレが持っていた『魔法創造』だ! ソレを残っていた最後の神の権限でオメーに付与したんだ!」


……思っていたよりも早く、俺の手元に一番のチートが渡ってきましたな。


次回 Episode070 かき氷屋台を王都にて。

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