【11万PV,1240F,★170,♡2450】勇者にフラれた最強美少女の『ざまあ』を手伝ったら、急にスローライフが始まりました~俺でいいならお好きなだけ隣にどうぞ~
Episode051 解毒。そして家族は増えるのか?
Episode051 解毒。そして家族は増えるのか?
あーヤバい。マジでどうしてこうなった。
思えば、コレがヘルメイス様のシナリオ通りじゃなかったら、道中で都合よく洞窟なんて用意されているだろうか?
それに、そこに大魔導士ナノックが現れて、彼女の家に行ったら当人やその弟子であるテイニーに俺の毒に侵されてる口がそれはそれは頭のオカシイことを言った。
もしコレでヘルメイス様が関与してなかったら、かなり意外なんだが。
「ほら、テイニーちゃん。もうやっちゃってくれない?」
「分かりマシタ! ちょっと動かないでクダサイね?」
何やら勝手に始めた2人が、急に俺の解毒作業をしようとしているんだが。
俺としては早く解毒してもらえることに不満はない。
ただ、俺のよく当たる予感――と言っても、ヘルメイス様が仕組むなら~というのが予想しやすいだけである――が正しければ、ヤバいことになりそうな気が……。
と思っていると、テイニーが俺の両の頬に手を添えた。
……え? まさか?
「それでは、やりマスよ?」
『ちょ、ちょっと待て! 一回落ち着こう! このやり方は間違ってる!』
……何を隠そう、俺は今から、キスをさせられようとしている可能性が高い。
勿論、コレが解毒作業だというのは分かる。
だって、俺の口の毒を凍らせるなり何なりして解決するんだから、俺の口の周りをどうにかする必要があるってことになるからだ。
だからと言って、こんなことでファーストキスが済まされるのは……!
しかも、テイニーの顔が少しずつ近づいてきている。
……まあ、テイニーも美少女なんだし、まだよかったとするか……。
俺はそう諦め、そっと目を閉じると。
「『毒凍結』!」
と声が聞こえ、俺の口内の感覚が戻ってくる。
思わず目を開けると、口の中を覗き込みながら、テイニーが魔法を発動させていた。
というか、ドラゴンブレスみたいな感じで口の前に魔法陣が出てきているのがちょっとビックリである。
……それより、キスするワケじゃなくてよかった……。
テイニーは魔法の発動を終え、俺の頬から手を放すと。
「はい! これで解毒が終わりマシタ!」
と言って、満面の笑みを真正面から見せつけてくる。
……5㎝も離れてないところから浴びせられる美少女の笑顔は危険だな。
俺だって男なのだ。顔を近づけられればドキドキする。
そのまま俺を眺め続けていたテイニーが、ニヤッとしてこう言うまでは。
「その顔は、テイニーがキスをしようとしていたのに違ったことに対する、複雑な心境の顔デスね~? もしかして、キスするような感じで解毒が行われるって思い込んでたんデスか! 仕方ないデスね。そういうことなら、一回くらいキスを……」
「それはテイニーちゃんがアヅマくんとキスしたいだけでしょ! 私がココに連れてきたんだから、キスするなら私に優先権があるはず!」
……早速修羅場になりかけているんだが。
しかも今回は、今までと違ってキスの話なのが厄介でやんす。
おっと、前世に聴いていた曲の歌詞が出てきちゃったのは内緒だ。
そういえば、この世界に来てから、日本にあった曲を思い出すことってなかったな。
どっかのタイミングで、日本にあった曲を再現してみるか。
世界を渡ってるんだし、著作権とかその辺は関係ないはず。
その話は置いといて、まずは目の前の状況をどう片づけるべきか……。
「アヅマ! アナタは、テイニーかナノックか、ドチラにアナタにキスをする権利があると思いマスか?」
「アヅマくん! あなたはどっちを選ぶの!?」
言い争いの結論を俺に委ねないでほしいんだが。
俺としては、誰かに他の皆と隔絶する理由を作りたくないから、キス自体に反対だ。
だからと言って、全員と無闇にキスすればいいというモノでもない。
そういうことにできるだけ価値を持たせたいとかじゃないんだし、俺は皆からの愛が軽薄な愛になるのを恐れているのかもな。
まあ、そうやって欲張るのは俺の趣味とはかけ離れているし。
今の時点で欲張っているような感じなのかもしれないが。
だから、もう毒
何故なら、今の俺ってのは……。
「……俺、1人だけってのを決められない優柔不断だけど、逆に全員とってのも、愛が尊重されてないみたいで嫌なんだ。だからさ、もしものときに残してくれ。いつ何処にそんな状況が訪れるとも思えないけど、大きい意味を宿すキスをする日まで」
……皆の愛に、脳が侵されてると思うから。
じゃなかったら、既に最初に選んだみたいにユイナだけを選んで、救える人も知らないで救わないでいる生活だっただろう。
ちなみに、俺の考えている『大きい意味を宿すキス』というのは、『キスをしなくば誰かが死ぬ』とか『キスしないと魔法が完成しない』とか言う、一ミリも現実味のカケラもないような事態のことを指しているのだが、知られる必要もあるまい。
と俺が考えていると。
「……分かった。いつかアヅマくんが誰かを選ぶまで一緒にいるから、選んでくれるのを楽しみにしてるよ」
「アヅマがそう言うのデシタら、テイニーも今は諦めマス……。『今は』デスが!」
どうやら、今は言い争いをやめてくれたらしい。
もしやめてくれなければ、どっちかとキスをすることになっていたかもしれない。
まあ、そこまでヘルメイス様もイジワルじゃなかったってことだな。
……ん? 『アヅマくんが誰かを選ぶまで一緒にいる』?
「でも、私たちはずっと一緒にいるからね!」
「そうデス! アヅマには、テイニーを抱く義務がありマスから! あの発言がキノコの効果でも、絶対に抱きしめさせマスよ!」
そうかー。同居するかしないかの問題が残ってたわー。
次回 Episode052 増える家族と増築と混沌を極める野次馬たちの意見派閥
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